馬毛島基地整備 周辺海域に広範囲で「濁り」 防衛省「工事範囲外から濁水流出の可能性」、西之表市へ対策検討を明言

西之表市民が民間機から撮影した馬毛島。沿岸部の広範囲で海の濁りが確認できる=5月29日(読者提供)

 鹿児島県西之表市馬毛島で進む自衛隊基地整備を巡り、市と防衛省の協議が14日、8カ月ぶりに市役所であった。これまで島周辺海域では、雨が降った後などに広範囲で濁る状況が確認されており、同省は「工事範囲外から濁水が流れ出ている可能性がある。対策を検討する」と答えた。

 同省の原田道明九州協力調整官は、工事区域内の濁水対策として(1)植生の吹きつけによる裸地の保護(2)仮設沈砂池の設置(3)環境基準値以下にする排水処理-を挙げた。一方、区域外については「着工前から沢などに泥が堆積し、それに起因する濁水が海に流れたと考えられる」と説明。「区域外でも国有地というのは事実。無関係というわけにはいかない」と述べた。

 同省によると、基地整備にあたり、海中の濁水拡散を防ぐ「汚濁防止膜」は、潮の流れが速いため設置されていない。仮設桟橋などの建設に際し、基礎石(捨て石)は海を濁らせないために「海面に近い位置から投入するよう業者に指導している」としたが、事前に石の洗浄はしていないという。

 濁りについて、市側が「島の周囲は優れた漁場で、土砂の堆積が環境悪化につながる」として議題に上げた。終了後、八板俊輔市長は「梅雨時期に入ったこともあり、対策はしっかりしてほしい」と話した。

◇西之表市長、国に補償充実求める

 西之表市の八板俊輔市長は14日開会した市議会定例会の所信表明で、馬毛島の自衛隊基地整備について「工事に伴う影響は島の暮らしの多方面に波及している」「失うもの、失ったものへの国の評価は不十分だ」と指摘した。安全保障政策に一定の理解を示しつつ、補償の充実を国に求めていく考えを示した。

 所信表明では初めて工事終了後を見据えた対応にも触れた。「基地が運用された場合の騒音、機能拡大はないかなど、不安解消に取り組まなければならない」と説明。焦点として(1)市民の安心安全確保(2)暮らしと環境への補償-を挙げた。

 ただ、補償のあり方を巡っては、従来から国に見直しを求めている。この日も「現行制度はほぼ既存の基地所在地が対象。基地と無縁だった馬毛島や種子島では十分なのか大きな疑問がある」と問題提起した。

 終了後、南日本新聞の取材に「所信表明で基地を受け入れる考えを示したわけではない」と釈明。「判断材料がそろっていないということは変わっていない」と答えた。

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