10年で3度目の桜島フェリー値上げ 島だけど離島じゃないから優遇運賃はできない…鹿児島市と合併20年で人口は半減。島民は嘆く「人が一層減るのでは」

運賃の値上げが予定されている桜島フェリー。後方が桜島=鹿児島市桜島横山町の桜島港

 鹿児島市は7月から、桜島フェリーの運賃を値上げする。利用減少で赤字が続き、資金不足により経営健全化団体に転落する恐れがあることが大きな理由で、市船舶局は「生活、防災の航路を維持するための苦渋の選択」と理解を求めている。

 桜島フェリーの値上げは鹿児島市議会3月定例会で関連議案が可決され、すでにゴーサインが出ている。桜島地区の住民も一定の理解を示すが、不満の声がくすぶっている。

 介護が必要な親の通院に桜島フェリーを使う桜島藤野町の60代男性は「車で行かざるを得ないが、付き添いを含めて往復5000円以上かかることになる。負担は大きい」と表情を曇らせる。値上げはこの10年で3度目。新船導入の在り方など、経営方針をいぶかる声も根強いという。

 桜島白浜町で車の整備工場を営む篠原誠さん(57)は「桜島に住みにくくなり、人口減少が一層進むのではないか」と懸念する。旧桜島町と旧市域を合わせた桜島全体の人口は、合併した20年前と比べてほぼ半減の3200人余り。「以前のように『待たずに乗れる』フェリーではなくなった。市は観光船という一面だけでなく、生活に欠かせない島民の足であることをきちんと考えてほしい」

 燃料費高騰や人手不足に悩む物流業界にとっても、値上げは打撃だ。市内の物流会社で輸送管理を担当する40代男性は「(値上げ分の)荷主への転嫁は限界がある。フェリー以外も含めてルートを再検討するなど対応を考えたい」と話した。

 市船舶局によると、桜島フェリーは離島航路ではないため、特定地域の住民を優遇する運賃設定が法律上できない。一方で桜島地区は1世帯当たりの軽自動車保有台数が1.06台と、市全体の0.63台より高い。市船舶局は地元住民への配慮として、軽自動車の回数券(3~4メートル未満、40枚つづり)の割引を拡充。当初案の1枚当たり1190円から、同1148円に引き下げる。

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