世代間交流、安否確認 地域の寄り合い所「めだか」 取り組み注目も高齢化など課題

放課後クラブでスタッフが見守る中、宿題などに取り組む子ども=諫早市、「めだか」

 高齢化やコミュニティーの希薄化を背景に、住民が気軽に参加できる集いやイベント、放課後クラブ、野菜販売などを開催し地域交流の拠点となっている場所が長崎県諫早市堂崎町にある。住民有志グループがボランティアで運営し、2019年4月に開設した「地域の寄り合い所『めだか』」。識者は「共生社会に貢献する取り組み」と注目している。
 「元気にしとった? 体の痛みはどがんね」「どうにかね」-。1日朝。「めだか」は高齢者でにぎわっていた。毎週土曜の野菜販売。障害者施設や農家が手がけた青果・加工品が並び、地元スーパーも野菜以外の品ぞろえに協力する。
 特に人気なのが「110円コーナー」。新鮮で安価なタマネギ、ジャガイモ、トマトなどが瞬く間に売れていく。「また、会おうね」「ここでしか会えんもんね」。しばしの歓談を楽しんだ高齢者らはこう言葉を交わし、家路に就いた。

◆安否確認
 午前9時半、運営グループの福田美子副代表(63)が“店”を閉じ、商品をマイカーに積み込んで向かったのは住宅街の一角。車を止めると数人が集まってきた。高齢の“買い物難民”たちだ。
 大薗サツエさん(85)もその1人。以前は夫が運転する車で「めだか」を利用していたが、4年前に夫が他界し、外出が困難に。顔を出さなくなったことを気にかけた福田副代表が自宅を訪ねて事情を知り「買い物支援と安否確認を兼ねた」(福田副代表)巡回販売先の一つに加えた。「助かっている。集まった人たちと石段に腰かけて1時間ぐらいおしゃべりする。それが楽しみ」。大薗さんがほほ笑んだ。
 堂崎町など西諫早ニュータウンは1969年度から77年度にかけて造成・分譲された大規模住宅団地。約半世紀が経過し、高齢化が進んで空き家も増えている。
 「めだか」はこうした状況を踏まえ、高齢になっても住み慣れた地域で暮らしていけるよう、気軽に集える場として開設した。理容店だった物件を所有者の福田副代表が提供。同ニュータウンにある市立真崎小学校区(6自治会)を中心とした有志が「グループ『めだか』」を立ち上げ、運営している。
 同校区以外の住民も参加できる「楽しく動いて脳トレのつどい」(月1回)、「みんなで歌おう」(同)、「パソコン・スマホ塾」(月2回)を定期開催。子ども向け「めだかの学校」では母の日に向けてフラワーアレンジメントを作ったり、ハロウィーンやクリスマスに合わせたイベントを開いたりと世代間交流に一役買っている。

◆“居場所”
 真崎小児童を対象にした毎週金曜の「放課後クラブ」は、子どもたちの大切な“居場所”だ。現在、1~6年生の11人が利用し「自由でみんな仲がいい」(5年生の女児)。宿題を済ませると、スタッフと近くの公園でボール遊びを楽しむなど思い思いの時間を過ごす。利用する児童の母親(37)は「異なる学年の子どもたちが集まって触れ合えるのが魅力。(スタッフが地域住民なので)預けて安心感がある」と話す。
 課題はスタッフの高齢化だ。運営を支えるメンバーは60~80代の9人。峯友清博代表(75)は「地域全体が高齢化している。(グループが地域向けに発行している)ニュースでも募集を呼びかけているが、なかなか解決策がない」。拠点となる物件探しにも時間を要した。「物件を相場で借りたら赤字になる。活動を開始するときには仲間だけでなく場所も大切。こうした活動を各地に広げるには、空き家活用など行政の協力が必要」と言う。
 地域福祉が専門で、「めだか」開設の経緯を知る鎮西学院大地域・産学連携推進センターの岩永秀徳アドバイザーは「高齢化、過疎化で無縁社会が広がる中、こうした“縁結び”の場が必要で、そのためには住民力が求められている。住民の触れ合いやあいさつが増えることで助け合いの意識が芽生え、犯罪防止や災害にも強い地域になる」と活動の意義を強調する。

巡回販売する福田副代表(左から2人目)=諫早市堂崎町

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