埼玉決勝は昌平が西武台を相手に5発圧勝!“初陣”を飾った元日本代表の新監督が「個は全国トップ」と夏制覇へ意欲【インターハイ】

全国高校総体(インターハイ)埼玉県予選最終日は6月16日、NACK5スタジアムで昌平と西武台による初顔合わせの決勝が行なわれ、昌平が5-1で大勝し、2大会ぶり5度目の頂点に立った。インターハイ(7月27日~8月3日/福島県)出場も5度目となる。

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中断しているプレミアリーグEASTで暫定3位の昌平は、立ち上がりに2度の大きな危機を招いたが、GK佐々木智太郎(3年)の好守などで凌いでから、本来の力を表現していった。

前半21分に左CKを獲得すると、FW鄭志鍚(3年)がヘッドで決めて先制。鄭は29分にも右SB安藤愛斗(2年)の右クロスを頭で合わせて連続ゴールを奪った。玉田圭司監督から前半取れなかったらハーフタイムで交代、と冗談交じりに激励されたそうで、「今日はそれくらいの強い気持ちで臨みました。自分のゴールでチームを勝たせる覚悟、どん欲にゴールを狙っていく姿勢で戦いました」とこの日2得点、今大会通算5得点のエースFWは喜んだ。

39分には、FW山口豪太(2年)が厳しいプレスで敵ボールを奪い、パスを預かった三浦悠代(3年)が4試合連続ゴール。「立ち上がりは少しバタバタしてしまいましたが、自分が点を取って3-0にしたのは大きかった。チームに貢献できて良かったです」と小柄なMFは満面に笑みを浮かべる。

昌平が圧倒的優位な立場で前半を終えた。

後半に入ると西武台がより攻撃を重視したことで、それまでマンマークで厳しく監視されていた主将でアンカーの大谷湊斗(3年)が自由に動き始め、これが勝利を決定づける導火線となった。後半3分、大谷は中列後方から豪胆に持ち運んでから相手DFの股間を破り、左足での弾丸シュートを右隅に蹴り込んだ。

昌平の良質な攻撃はまず大谷を経由してスタートし、山口や三浦、本田健晋(3年)らのFW陣、MF陣がドリブルでの仕掛けや短いパス交換、縦への鋭い進出で敵の守備網をはがしていく。攻めの心臓部が自在に、活発に躍動できるようになれば、超高校級の攻撃を食い止めるのは容易ではない。

13分から32分までの間に大谷が起点となった決定的場面が5度あった。怪我のMF長瑠喜(2年)に代わって先発した岩谷勇仁、松本レイの両FW(ともに3年)には完全無欠の最終パスを届けている。そうして39分、軽やかなドリブルで攻め上がって鄭とパス交換すると、出てきたGKを切れ味抜群の切り返しで置き去りにし、豪快なダメ押しゴールを突き刺した。

1年生の秋に台頭し、年々すごみを増す大谷。「前半はいい感じでボールを受けられず、ただ時間が過ぎていくだけでしたが、後半はマークが少し緩くなったので前に出ていく意識を高く持ちました」と80分を振り返り、「埼玉で優勝したといっても、まだインターハイの出場チケットを取っただけですからね。全国大会でも相手を圧倒して初優勝したい」と力強く抱負を語った。

プリンスリーグ関東2部の西武台は前半2分、FW鈴木洸晴(3年)が左を切り裂いて出色のクロスを上げたが、フリーで打ったFW緑川梗雅(3年)の一撃はバーを通過。絶好の先制機を逃し、13分の鈴木の決定打はまずGK佐々木に弾かれ、続いてゴールインしそうになったところを左SB上原悠都(3年)にかき出されてしまう。

指揮を執った関根雄太コーチも「あの2本を決められなかったのは悔いが残る」と大いに地団太を踏んだシュートであった。アディショナルタイム、FW竹内奏海(3年)が左から鋭い突破で仕掛けてPKを獲得。これを自ら決めて1点を返したが、力の差が大きく完敗に近い内容だった。

日本代表やJリーグ名古屋グランパスなどで活躍した玉田監督は昨春、スペシャルコーチに就任し今年3月から采配を振るう。初陣となる県内トーナメント戦を制し、「決勝だからといって特別なことはせず、初戦から準決勝までのプレーをやろうと伝えた。普段通りの試合をやることが重要だった」と振り返る。

千葉・習志野高では、1998年のインターハイで自身の活躍もあって3位入賞。昌平の最高成績も3位だ。今度は指導者として臨む初のインターハイ。「個(の力)は全国トップ。それをグループでも出せるよう、気持ち良くプレーできる環境を作りたい」と述べ、自身も達成できなかった頂点へと挑む。

取材・文●河野 正

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