「日本武尊山車」復元の軌跡、記念誌に 宇都宮の「山車復活プロジェクト」 市長に計画完了報告

日本武尊山車復活記念誌

 【宇都宮】市民有志でつくる「宮のにぎわい山車復活プロジェクト」は、旧茂登(もと)町(現西原地区)の「日本武尊(やまとたけるのみこと)山車」を復元した軌跡を記念誌にまとめた。山車と屋台の計4基をよみがえらせた12年に及ぶ活動も盛り込んだ。メンバーらはこのほど市役所で佐藤栄一(さとうえいいち)市長に復元計画が完了したことを報告し、「歴史的財産として、展示保存など今後の活用に協力してほしい」と展示収蔵庫の拡充を要望した。

 日本武尊山車は1884年ごろに建造され、日本武尊が竜と戦う様子を色鮮やかな人形と彫刻で表現。1934年の宇都宮二荒山神社の菊水祭での巡行を最後に姿を消していた。2013年の残存物調査を経て、20年から復元作業に入り、23年1月に地元の西原小でお披露目した。

 記念誌はA4判、84ページのカラー刷り。宇都宮工業高生らの協力による躯体(くたい)制作や新型コロナウイルス感染症の影響を受けながら完成に至った経過などを掲載。資料として、それぞれの部材の図面も記録した。

 これまでに復活させた高さ約9メートルを誇る「新石町火焔太鼓(かえんだいこ)山車」、赤い陣羽織姿の人形が特徴の「南新町下組桃太郎山車」、ピンク色の花飾りが目を引く「旧大黒町花屋台」についても振り返った。昨年10月の菊水祭350周年記念祭で4基がそろい踏みした様子を豊富な写真で紹介。市民からの浄財約2千万円と文化庁の補助金約4千万円など計約6400万円によって4基を復元したことも報告している。

 プロジェクト発起人の田巻秀樹(たまきひでき)さん(75)ら4人が佐藤市長と馬上剛(うまがみごう)市議会議長を訪問した。

 要望書では、17年に市が整備した宇都宮城址(じょうし)公園内の収蔵庫を、3基の山車を入れ替え展示し、別の3基を組み立てた状態で収蔵できるよう、拡充を求めた。田巻さんは「山車、屋台は組み立てと解体が負担。展示保存すれば、市民の目に触れる機会が増え、観光資源としても活用できる。ぜひ検討してほしい」と話した。

佐藤市長(右から2人目)に計画完了を報告し、要望書を手渡すメンバーら

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