選手のモチベーション上げたソフトバンク小久保監督 先発転向左腕のスタミナは〝モンスター級〟交流戦総括&球宴までの展望

1日の広島戦の試合後、ヒーローインタビューを終え、ファンと触れ合う佐藤直(撮影・栗木一考)

ソフトバンクは日本生命セ・パ交流戦を12勝6敗の2位で終えました。最終戦に敗れて5年ぶり9度目の優勝(最高勝率を含む)は逃しましたが、3番の柳田悠岐外野手が5月31日の広島戦で右脚を痛めて離脱する中、18試合で貯金を六つ増やしました。今週の「もっとホークス」では、阪神、ダイエーなどで投手として活躍し、交流戦前にも登場した西日本スポーツ評論家の池田親興氏に交流戦の総括や今後の戦いについて語っていただきました。

ソフトバンクは交流戦で貯金を六つ増やした。柳田離脱という大きなアクシデントがあったことを思えばうまく戦えた。先を見据えた小久保監督の選手起用が当たり、収穫は多かった。

佐藤直は柳田の負傷翌日の1日に育成から支配下に復帰即昇格。同日の広島戦に1番で先発し、安打や盗塁で躍動した。定評のある足や守りに加え、2軍では右方向や追い込まれてからの打撃に進境を見せ、打率3割台。ドラフト1位入団ながら育成契約となりプライドをかなぐり捨てて生まれ変わった感じだ。

柳町は昨年116試合に出場しながら、今季は外野の厚い壁に阻まれ、開幕から2軍生活が続いて調子を落とす中、視察した小久保監督に声をかけられた。腐らせない声かけに刺激を受けたのか、交流戦では3割5分1厘の高打率。「ちゃんと見ている」ことを伝えられれば選手は心強い。小久保監督は昨年までの2軍監督経験で視野が広くなり、選手のモチベーションの上げ方を心得ている。

牧原大、三森が離脱した二塁を埋めた廣瀨は14日の阪神戦での決勝2ランで実績をつくった。笹川は翌15日の同カードでプロ1号。ファームでは打ち損じても自分の形にはなっていた。可能性を感じる選手だ。

◆カード初戦に全勝した意味…次ページ

今回の交流戦ではカード初戦、つまり火曜と金曜に全勝した。そこの先発を託されている有原とモイネロの安定感を示している。

特に今季先発に転向したモイネロの働きが光る。交流戦前から8回、120球以上を投げる時があり、14日の阪神戦では7回で自己最多の12三振を奪った。そして中6日を守れている。スタミナは未知の部分だったが、最近7試合は全て7回以上を投げている。まさにモンスター級だ。3連戦初戦を取るのは勝負の鉄則。そこに先発する投手が安定していれば、ローテーションはつくりやすくなる。

交流戦前に注目選手に挙げたオスナも、シーズン序盤より体が絞れ、球速が上がり、カットボールやチェンジアップが良くなった。

◆交流戦明け、ソフトバンクに明るい材料二つ…次ページ

21日にパ・リーグの戦いが再開する。ソフトバンクはオールスターまでに25試合を戦うが、屋外では21日の北九州でのロッテ戦だけ。梅雨でも先発ローテーションを組みやすいのは大きい。

交流戦を制した楽天と3試合だけなのも恵まれている。ただ楽天は交流戦前とは違う。今江監督は不振の浅村を中軸から外し、代打に回した試合もあった。チームを目覚めさせた〝覚悟〟だ。日本ハムでは現役ドラフトでソフトバンクから移籍した水谷が活躍。チームも選手も何をきっかけに変わるか分からない。プロ野球に入るような選手は無限の可能性を持っている。

パは2位から5位まで4.5ゲーム差の混戦。ソフトバンクは2位に8.5ゲーム差とはいえ、3連敗を2度喫すれば一気に差を詰められる。同じことを繰り返し、ペナントレースが終わるまでは気を抜かない。3連戦の初戦を取りながら貯金を少しずつでも増やしていきたい。(西日本スポーツ評論家)

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