代わる政権 揺れる支援 先進 英国の今 コロナ禍、手当で救済 対策と現状 希望って何ですか 第5章特集-読者とともに考える-

 子どもの貧困対策の先進国として知られる英国。強力なリーダーシップによってさまざまな施策が展開され、2000年代に入り子どもの貧困率は減少した。しかし政権交代などの影響により、近年では上昇に転じている。5月21~27日、英国・ロンドンを訪れた。現在の取り組みや子どもの貧困率の推移などを紹介する。

 1999年のブレア宣言をきっかけに子どもの貧困対策に取り組んできた英国。社会保障費の削減などで政策の変遷はあるものの、現在も貧困撲滅に向けた施策が展開されている。

 2013年から順次導入が開始されたユニバーサルクレジットは、失業や障害などにより働けず、所得が減った際に生活費を補助する手当制度。児童タックスクレジットや就労タックスクレジットなど、所得を補うための既存の6種類の制度を統合した。

 

 受給者数は新型コロナウイルス禍で急増。ロックダウン(都市封鎖)が始まった20年3月は300万人だったが、5月までに520万人に増加した。21年には600万人に到達。その後一時減少したものの、近年は生活費の高騰などにより増加傾向にある。24年4月時点の受給者数は670万人を記録した。

 また同年2月の受給世帯のうち、子どもがいる世帯は48%を占めたほか、ひとり親家庭の受給は長期的に増加している。

 子どもの貧困の調査研究などに取り組むロンドンの民間団体「チャイルド・ポバティ・アクション・グループ」のリジー・フリューさん(39)は「パンデミックの間は多くの人がユニバーサルクレジットで救済された」と評価する。

 一方で、申請から給付開始まで5週間かかることからその間の生活費を工面する必要があることや、オンライン申請が原則となっていることから、インターネット環境のない貧困家庭がアクセスしにくいことを課題に挙げた。

 学校給食の無償化も支援策の一つ。イングランドでは14年9月以降、幼稚園、小学1~2年生の全児童に無料の学校給食が提供されている。3年生以降は低所得世帯などに限られる。

 21年にスコットランド政府、22年にはウェールズ政府が全児童を対象とした無償化に取り組み始めた。23年からはロンドンでも実施。今年5月に行われたロンドン市長選では、3選を果たしたサディク・カーン市長が無償化の期間を延長する公約を掲げていた。

 一方で英国全体で依然としてばらつきがあり、居住地に応じて支援の手厚さに差が生まれる現状が浮き彫りとなっている。

路地にある建物の壁には落書きが目立つ=5月26日午前

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