被爆体験者の救済巡り…長崎市は研究会の報告書を「提出」へ

原爆に遭ったものの、「被爆地域」の外だったため、被爆者と認められていない「被爆体験者」の救済をめぐり、長崎市の鈴木市長は市が設置した研究会がまとめた報告書を国に提出する方針を初めて示しました。

鈴木市長は長崎市議会の一般質問で市民クラブの池田章子議員の質問に答えました。

鈴木市長
「様々な懸念する声があることは承知しています」「科学的知見に関する論文が出始めていることをしっかりと国に伝えることが今後の被爆地域の拡大・是正の突破口の1つになると考える」

「被爆体験者」は原爆投下直後に降った「黒い雨」や灰などに含まれる放射性物質を体内に取り込み、健康被害を受けたとして被爆者認定を求めています。

2013年に市が設置した原爆放射線影響研究会は、6月に「低線量被ばく」の健康被害について調査した結果、「確固たる知見は得られなかった」と結論付けました。

報告書では「近年、人体影響を示唆するような国際的な論文が出てきている」と補足しているものの、被爆体験者の団体は「救済を拒否するための口実に使われるおそれがある」として、報告書を国に提出しないよう市側に求めていました。

市民クラブ 池田章子 議員(社民党)
「長崎県も市も被爆体験者も求めているのは広島『黒い雨』地域と同等の扱いをすること」「広島高裁では『線量は不問、線量は問わない』という判決が出ている」「今更、線量を取り上げた報告書の提出は全く意味がない」

一方、厚生労働省が「被爆体験記」を調査した結果、被爆地域外での降雨などを「客観的事実として捉えることはできなかった」と結論付けた件については…

池田章子 議員
「自分に都合よく書き換えられている、とか信用できない、と切り捨てている。『嘘とは失礼だ』と、なぜ市は抗議しないのか」

原爆被爆対策部 阿波村功一 部長
「調査を新たに追加を要望している客観的資料として可能な資料の捜索範囲を拡大するよう働きかけていきたい」

国に反論するかどうかについては明言を避けました。

© 株式会社テレビ長崎