あしなが育英会の高校生向け奨学金 「申請が寄付額を上回る状況」 資金不足で募金呼びかけ

 病気や事故で親を亡くすなどした高校生に給付する「あしなが育英会」の高校奨学金が資金不足に苦慮している。栃木県内の2024年度の申請者数は前年度から6人増の26人となり、過去6年間で最多となった。一方、採用者は10人で、採用率は38.5%だった。物価高などで生活に困窮する家庭が増えている中、資金不足による不採用が増加している。高校奨学生だった女性(19)は「学ぶことや進学の夢をかなえるために募金へ協力してほしい」と呼びかけている。

 同会の高校奨学金は家計状況などを書類選考し、採用者に月3万円を給付している。23年度から制度が変わり、貸与型から返済不要の給付型となった。

 同会で確認できる19年度以降の申請者数は19年度15人、20年度17人、21年度5人。いずれも全員への貸与を決め、採用率は100%だった。22年度は11人の申請に対し10人を採用した。

 23年度は給付型への変更も影響し、申請者が20人に急増。一方、採用できたのは9人で採用率は45%に低下した。24年度の申請は26人とさらに増えたが、採用は10人にとどまった。

 同会によると、奨学金の給付は寄付や募金、奨学金の返還額を原資に運用している。同会学生募金課の担当者は「返還に不安を感じていた生徒も、給付型になったことで申請できるようになった」とみる。

 一方で「申請が(給付できる)寄付額を上回る状況で、採用数を絞らざるを得ない」と財政状況の厳しさを明かす。大学生や専門学校生への奨学金でも同様の傾向があるという。

 千葉県内の私立大に通う女性(19)は母子家庭で育ち、高校の3年間、奨学金を受けた。「奨学金がなかったら、好きな勉強も大学進学も諦めていた可能性がある。進路の選択肢が広がった」と感謝する。

 女性は今春、宇都宮市内での街頭募金活動で支援を呼びかけた。「助けを必要としている学生がいることや、あしなが育英会のことを多くの方に知ってもらいたい」と訴えている。

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