コロナ禍で女性の自殺増える『自殺の増加率が全国1位』専門家に聞くその訳と今後への対策は 富山

198人。
一昨年、2022年の1年間に富山県内で自殺した人の数です。
県内で自殺した人は、2003年の356人をピークに減少傾向でしたが、コロナ禍に入った2020年からは増加傾向に転じました。
富山で、特に増えたのが女性の自殺です。

*富山大学 疫学・健康政策学講座 立瀬剛志助教
「コロナ禍に富山県の女性の自殺が急増した。自粛要請あった3年間は、前の3年間と比べて増加率が全国1位」

自殺対策について研究する富山大学の立瀬剛志助教です。
県内の女性の自殺の増加率が、コロナ前と比べ全国で最も高かったといいます。

人口10万人あたりの自殺者の数です。
全国平均では男性が横ばいなのに対し、女性は1.12倍に増えました。

これを富山県だけでみると、男性は1.03倍と微増ですが、女性は1.38倍と増加率は全国1位でした。

*富山大学 疫学・健康政策学講座 立瀬剛志助教
「コロナ禍でも男性はあまり変わらなかった。全国的に女性が増え、その中でもダントツで増えたのが富山」

なかでも30代と50代の女性の自殺が増えたということで、立瀬助教は、コロナ禍で制限された不要不急の外出が影響を及ぼしたのではと推測しています。

*富山大学 疫学・健康政策学講座 立瀬剛志助教
「ワークライフバランスの良くない県なのかもしれない。女子会とか一切なくなった。それで何とか日常を保っていた人たちがいたのかもしれない。パンデミック時の緊急事態に対して非常に脆弱だった。家と職場の往復以外を取り去られると、非常に弱い」

コロナ禍のステイホーム。
その最中に増えた家庭内の暴力、「DV」が女性の自殺者数を押し上げたと指摘する医師がいます。

*種部恭子医師
「DVがあると、早産が増える。低出生体重も増える。性感染も増える。当然、身体的暴力であれば外傷も多いが、一番大きな影響があるのは自殺。自殺のリスクは4.54倍増える。DVがあれば自殺率は上がる」

県議会議員の傍ら、内閣府の研究チームでコロナ禍の女性への影響を調査していた種部恭子医師です。

県内のDVの相談件数はコロナ禍だった2022年度までの3年間、コロナ前より2割ほど増えました。

その一方、離婚率が全国で最も低いのが富山県の特徴だと話します。

*種部恭子医師
「DVは一定数必ずある。富山県は離婚率が低いし、DVから逃れて自立をするのは難しい地域。持ち家率も高いので、借金も背負っている。背負うものが多くなればなるほど、そこから出られない。逃げることは悪いことではない、生き延びるだけで精一杯、怖いから逃げられないのはわかるが、人の手を借りていい、助けを求める風土は作らないといけない」

電話などで相談を受けるNPO法人、富山カウンセリングセンターです。
365日、行政の相談窓口が閉まる夕方から深夜11時まで対応にあたっている、自殺予防の最後の砦です。

*富山カウンセリングセンター 櫻井ひろみ理事長(公認心理師)
「自死願望、自殺念慮は、結局、自分自身が独りぼっちだと感じている。孤独、孤立してしまっていると思い込んでしまっている。早まらないで、うちがあるよ、あなたのそばにいると呼びかけ続けている」

相談件数は年間およそ2000件。
特にコロナ禍は、30、40代の女性からの相談が多かったといいます。

*(カウンセリングの記録)
「踏切の音が聞こえた。思わず線路の方に向かった。とびこみたい」
「消えてなくなりたい」

*富山カウンセリングセンター 櫻井ひろみ理事長(公認心理師)
「共通するのは家族の理解がない。家族の中で孤立してしまう」

理事長の櫻井さんは、こうした相談窓口につながっても、自殺にいたったケースがあるとし、普段から声を掛け合う地域づくりが重要だと話します。

*富山カウンセリングセンター 櫻井ひろみ理事長(公認心理師)
「さりげなくおしゃべりできる関係性が富山でも構築されていったら、自殺者は減る。2人に1人、そういう寄り添う人が生まれたら死ぬ人はいない」

櫻井さんは「誰もがひとりで生きていけるほど強くない。何の資格もなくても、ひとりの声かけで、救える命がある」と話します。

悩みを抱えていたら、相談してみてください。
県の電話相談窓口は「076ー428ー1511」、平日の朝から夕方まで受け付けています。
夕方から夜間まで対応にあたる富山カウンセリングセンターは「076ー492ー6635」、毎日午後4時から夜の11時まで受け付けています。

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