鹿児島県知事選が20日告示された。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で政治不信が広がる中、少子高齢化や都市部との格差など課題が山積する県政のかじ取りを誰に託すか。「国の言いなりではなく、独自色を発揮できる知事を選びたい」「市民感覚が分かる人に投票したい」-。有権者が注ぐ視線は厳しさを増している。
肉や野菜、調味料の相次ぐ値上げに戸惑う鹿児島市の女性(81)は、「政治家と国民の金銭感覚はかけ離れている。私たちには10円、20円でも大切なのに」。告示日は雨の中、桜島からフェリーやバスを乗り継ぎ、ある候補の出陣式に足を運んだ。「市民生活の苦しみを理解し、共感力のある人に知事になってほしい」と訴える。
指宿市の自営業男性(56)は「政治資金の原資が税金だと分かっているのか」と裏金問題を巡る自民党の対応に不満を抱く。「政治活動を透明化し、それを踏まえて有権者が投票するのがあるべき姿」とし、知事選では「市民のために仕事をしてくれる人を見極めたい」考えだ。
県知事選には、いずれも無所属で、元自民県議の新人米丸麻希子さん(49)、市民グループ共同代表の新人樋之口里花さん(52)、現職の塩田康一さん(58)=自民、公明、国民推薦=の3人が立候補。現職以外は政党の推薦を受けておらず、同じ日程で実施され、与野党対決の構図が強まる東京都知事選とは様相が異なる。
そもそも、裏金事件は県知事選に影響があるのか。鹿児島市の50代会社員男性は、自民の対応に不満を持つものの「知事選には影響はない」とみる。一方、同市のパート男性(64)は「政治が古い体質なのは政権交代が少ないからだと感じている。知事選でも自民離れがあるのでは」と推測する。
同市の会社員女性(35)は「政治への諦め感が広がっているような気がする」と指摘しつつ、投票には行く予定だ。都市部との給与格差などから若者らが県外に出て行く現状に危機感を持っており、「鹿児島のために思い切った行動ができる人に1票を投じたい」と話した。