レジェンドGK南雄太が明かす「26年のサッカー人生で一番のターニングポイント」救われた佐藤由紀彦の言葉

昨季に現役を引退した南雄太氏が、鈴木啓太氏のYouTubeチャンネルに出演。サッカー人生のターニングポイントを明かした。

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44歳まで現役を続けた南氏は、J1で266試合、J2では399試合に出場。Jリーグ合計665試合は、GKの通算最多出場記録だ。

そんなレジェンドGKが「26年のサッカー人生のなかで一番のターニングポイントです。一番大きかったです」と振り返るのが、柏レイソルに在籍していた2008年からの2年間だったという。

10代の頃から出場機会を掴み、99年のワールドユース(現・U-20ワールドカップ)の準優勝など華々しいキャリアを築いてきた南氏に、試練が訪れた。5歳下で現在は北海道コンサドーレ札幌でプレーする菅野孝憲に、スタメンを奪われてしまう。

「スゲが来て、最初は自分が出ていたんですけど、春先ぐらいでパッて代えられて、そこからチームの調子も良くなって、ずっとスゲが出ていたんですよ。まだ当時の自分はそれを受け入れられないというか、言い訳を探していて。だから自分とスゲはプレイスタイルが違うとか、監督やキーパーコーチの好みがあるからとか、何か自分のなかで言い訳を作っていたんですけど」

翌年に指揮官が代わっても、状況に変化はなかった。

「毎回スゲが試合に出ていて。自分が出るチャンスがないなかで、『俺に何かが足りないんだな』って。もう29(歳)ぐらいなんですけど、そこまで本当にそう思っていなくて。自信しかなくて自分に。ただ、この時に初めて自問自答したというか」

先輩からは心に残る言葉をもらった。柏のチームメイトで親交の深かった3歳上の佐藤由紀彦氏との会話を回想する。

「『スゲがずっと試合に出ているんだけど、自分のスタイルがどうこうとか、いろいろあって出れないんですよね』って言ったら、由紀彦さんにたった一言、『でも雄太が良かったら試合に出るんじゃね』って言われたんですよ。それがぐさって刺さって。そこで初めて、いろんなものを受け入れられるようになって」

現実を受け止め、心を入れかえた。

「『もう自分はそういう存在じゃないんだ』って自分のなかで思い始めて、上手くないんだと、上手くなるために努力しないとダメだなと思って。サッカー選手も、このままだともう終わっちゃうなと思って。ライバルですけど、スゲから何か盗んでやろうって、初めてそうやって思えて。

めちゃくちゃ仲が良かったです。スゲと四六時中一緒にいて『こいつ何やってるかな』とか、すごく興味があった。プレーもそうだし、何か気になって分からないことがあったら全然年下だけど(聞いて)。今までの自分だったら絶対していないんですよ。でも、スゲのおかげで自分がそういう風に変われた」

結局、2009年はリーグ戦で出番は訪れず。チームとは契約満了となった。それでも、南氏は「この2年間が一番上手になれた、サッカー人生のなかで。試合には出ていないけど、自分にとって大切な時間だった。その後、これだけ長くキャリアをやらしてもらえたのは間違いなく、この2年間のおかげだと自分では思っています」としみじみと語った。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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