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「鬼さんも最初から45分か60分ぐらいの目安でって言ってくれてたんで、しっかり心の準備できました」
今季初先発となった川崎フロンターレの小林悠は、その起用について試合後にこう説明した。沖縄キャンプも負傷で参加できず、この試合を前にした出場した今季の8試合はすべて途中出場。しかも、4月28日のサンフレッチェ広島戦(エディオンピースウイング広島)で再びの負傷に見舞われて、その後は戦線離脱を余儀なくされる。このアルビレックス新潟戦で今季初めてスターティングメンバーに名を連ねたが、実に9試合ぶりの出場だった。
新潟戦では、起用面でアクシデントも起きた。直近の公開トレーニングにも参加していた脇坂泰斗がメンバー外に。試合後、鬼木達監督にその理由について聞くと、「本当にいい形でトレーニングしてましたけれども、少しコンディション不良のところで急遽という形で」と突然のメンバー変更があったことを説明する。
実は川崎は、4月7日の町田ゼルビア戦(U等々力)でも試合直前にメンバーが変わっていたという。指揮官は、「自分も含めてマネジメントが上手にできなかったと思います」と当時のことについて話すが、その事例をこの試合では乗り越えてみせた。「今日はそのアクシデントに対しても負けない強さというものを、一つになって戦おうと、(選手間で)声もかかっていましたし、よくやってくれた」と緊迫の裏側を明かすからだ。新たにチーム作りを目指す中で一つ一つの積み上げをしている成果の一端が、ここで表れた。
■鬼木監督が小林に授けた言葉
チームキャプテンのまさかの欠場に直面したフロンターレだが、新潟戦のメンバーをまとめる役を小林に託した鬼木監督は、背番号11にある言葉を授けていた。
「気持ちをもう一回見せてほしい」
鬼木監督は、常日頃から小林が持つ「ギラギラ」について賛辞を惜しまない。その熱い姿勢を、チームに注入してほしいというわけだ。
何度苦しい状況に直面してけっして下を向かず、その結果が三浦知良を超えるゴール数につながった小林がそれに応えないわけがない。
「(自分が)怪我をしてるときも、試合前の雰囲気とか見ててそういうとこ足りないなと思ってました」と語るからこそ、「自分にできるのはそういうとこだろうなと思いましたし、ピッチに入る前やピッチの中で常に声を出し続けた」と、意識して自分の炎を周囲にくべ続けた。
それに、瀬古樹が強く反応。共に声を出し合ったことで、チームの空気は固まった。だからこそ、「みんな本当に勝ちにこだわって、今日やれてました。結果的に最後逆転されて、でも最後追いついてっていう形になりましたけど、次に繋がる良い試合だった」と諦めずに戦ったチームメイトを誇った。
(取材・文/中地拓也)
(後編へ続く)