【フィリピン】住商、工業団地の拡張検討[経済] 丸紅は風力関心、比が投資訴え

住友商事などが開発する工業団地「ファースト・フィリピン・インダストリアル・パーク(FPIP)」の看板=4月、バタンガス州(NNA撮影)

日本企業のフィリピン投資が活発になる兆候が出始めた。住友商事は現地の合弁会社を通じてマニラ首都圏南方で運営する工業団地の拡張を検討しているほか、丸紅は洋上風力発電への事業参入に関心を示した。ほかにも複数の企業が追加投資に動く。フィリピン政府の投資呼びかけに呼応する形で、将来の成長を見越して先手を打とうとしている。

フィリピン政府の経済閣僚らが先週に日本を訪問した際、日本企業と相次ぎ会談し投資を呼びかけた。貿易産業省によると、住友商事は運営する工業団地の周辺で新たに住宅や商業区画の整備を検討している。同社担当者はNNAの取材に「工業団地の拡張計画があるのは事実だが、詳細はまだ検討段階」と述べた。

住友商事は地場財閥ロペス傘下の投資会社ファースト・フィリピン・ホールディングス(FPH)と合弁で、首都圏南方のバタンガス州で工業団地「ファースト・フィリピン・インダストリアル・パーク(FPIP)」を運営している。敷地面積は500ヘクタール超。入居企業は140社を超える。

丸紅は洋上風力発電への事業参入を検討していると明らかにした。同社は首都圏北方のタルラック州で開発が進む新都市「ニュー・クラーク・シティー(NCC)」でスマートグリッド型の電力事業を進めている。

パスクアル貿産相は「外部環境が悪化する中でもフィリピン経済は健全さを保っている」と指摘。事業環境は良好だと強調した。ハイテク工業や半導体、再生可能エネルギーなどを優先分野に定めて投資を優遇していく姿勢を示した。

フィリピン経済区庁(PEZA)によると、投資を提案した日本企業5社超が実行に向けてデューデリジェンス(資産査定)を始めている。搭乗橋、スマートパーキング、排水処理用の潜水ポンプ、遠隔医療のバックオフィス、太陽光発電、食品貨物物流など多岐にわたる。

フィリピンに進出済みの日系企業も事業拡大に動いている。太平洋セメントはバタンガス州でのセメント貯蔵基地の建設や、中部セブ州に構える工場の年産能力を300万トンに増強する計画を進めていく方針を改めて示した。セメントの供給先を北部ルソン島に拡大する。

横浜ゴムは、首都圏北方のパンパンガ州クラーク特別経済区の工場で生産能力を増強する。1日当たり3万本強に引き上げる。天然ゴムの南部ミンダナオ地方での調達をはじめ、現地化にも注力している。

電子部品大手ミネベアミツミは、セブ州の工場で小型カメラ部品などを製造する。フィリピン政府が2028年までの目標に掲げる半導体技術者約13万人の育成に協力する姿勢を示した。ほかにもレクト財務相や国家経済開発庁(NEDA)のバリサカン長官ら経済閣僚が、三井住友銀行や野村証券、双日、三菱商事、村田製作所などの代表者と会談した。

日系企業からコスト負担が増す恐れがあると懸念の声が出ているのが、企業復興税優遇法(CREATE)だ。21年の施行後にそれ以前の税優遇措置が縮小され、付加価値税(VAT、日本の消費税に相当)の還付措置も停滞している。

現在は議会で改正案が審議されている。レクト氏は「改正案が成立すれば懸念は払拭される」との見方を示した。

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