トンネルの「非常口」はどこに繋がる?整備工事に記者が同行「中の様子と意外な役割」が明らかに

高速道路のトンネルを走行していると目にするのが、緑色の「非常口マーク」。事故や火災、災害が発生した時に誰でも利用できます。

しかし、教習所で使い方を習ったわけでもなく、いざ使うまでは未知の場所。そんなトンネルの「非常口」。その先はどこにつながっていて、どのようになっているのでしょうか。

トンネル非常口の整備に密着!

記者「阿蘇市の滝室坂(たきむろざか)トンネルにやってきました。ここは今まさに、非常口を整備しているところなんです。それでは、中に行ってみます!」

熊本市と大分市を結ぶ中九州横断道路の一部が国道57号「滝室坂道路」です。そのうち阿蘇の外輪山を貫く、全長約4.8キロが「滝室坂トンネル」の区間です。

「滝室坂道路」は、2012年の九州北部豪雨で、斜面が崩落し通行止めに。また、元々、急勾配でカーブが連続していて、冬場の事故が多かったことから、再来年度の開通に向けて新たなトンネルや道路の整備が急ピッチで進んでいます。

本坑とよばれる車が走るトンネルの全長は4.8キロ。その入り口から200メートルほど歩いた所に、一つ目の非常口がありました。

トンネルの周りは、山。非常口の出口は一体どこに繋がっているのでしょうか。

本坑と並行に伸びる「避難用トンネル」

佐野さん「避難坑が延長約4.9キロで、断面の有効幅員として、横が4.7m 高さが3.8mになっています」

記者「本坑と別にトンネルがあるんですね」

非常口を抜けた先にあったのは、本坑と並行に伸びるほぼ同じ長さの「避難用トンネル」。このトンネルを使って、外へ逃げることができます。

「滝室坂トンネル」の本坑貫通は、去年6月。では、この「避難坑」はいつ掘ったものなのでしょうか?

佐野さん「(避難坑で)水の量や地質の層を確認しながら、その結果等を踏まえて、実際に大きい断面がある本坑を掘っていく」

実は避難坑は地質調査のために掘ったトンネルを再利用したもの。通常の工事では、本坑よりも200~300メートルほど先行して掘り進めていくといいます。

この避難坑が、本坑の完成を大きく左右します。

避難坑を使った本坑掘削 大きさの理由は「重機」

熊本県大津町と阿蘇市を結ぶ国道57号・北側復旧ルートの『二重峠(ふたえのとうげ)トンネル』。ここにある避難坑は、通常の3倍の大きさです。

熊本河川国道事務所 大川晃弘さん「(本坑の)施工時にこちらの避難坑を使って掘削をやったので、重機が通れる大きさになっている」

「二重峠トンネル」は、熊本地震からの復旧道路。早期に完成させるため、避難坑を利用して同時5か所で掘削できるよう、重機が行き来できる大きさになっています。

いざというときに命を守る避難坑ですが、そこには危険を避けるために様々な工夫が。

大川さん「火災等があって、煙などが避難坑に来ないように二枚扉になっています」

本坑から避難坑までは、二重扉で守られていました。

もし火災に巻き込まれたら…

熊本県警などによりますと、過去3年間に、県内の自動車専用道路のトンネルで起きた人身事故は15件。

もし、トンネル内で火災などに巻き込まれたら、車を左側に寄せて停車し、救助隊が車を動かせるよう、ドアのロックはせずに、速やかに避難するよう呼びかけています。

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