「外国人排斥に近い」スコットランドの判定に対する怒りにアルゼンチン人主審の母国メディアが猛反論…「スペイン人のVAR担当に言及しないのは奇妙だ」

現地時間6月23日に行なわれたEURO2024グループステージ最終節で、スコットランド代表はハンガリー代表に0-1で敗れ、1分け2敗の成績でグループA最下位に沈み、早々にドイツを去ることを余儀なくされている。

勝利だけが次ラウンド進出に望みを繋ぐ唯一の手段だったスコットランドは、ゴールを奪えないまま後半アディショナルタイムを迎え、10分が過ぎたところでハンガリーのカウンターを浴びて失点。これまでワールドカップで8回、EUROで4回の本大会出場を果たしながらも、一度もファーストラウンドを突破できずにいる英国4協会の一角は、この不名誉な記録を今回も更新する羽目となった。

ショッキングな形で敗北を喫したハンガリー戦だが、スコットランドに勝機がなかったわけではない。特に終盤には、DFラインを抜け出したスチュアート・アームストロングがGKと1対1となったところで、背後から迫ったビリ・オルバンに倒され、PKかと思われる場面を迎えたものの、主審はこれをファウルと判断せず、VARもこれに介入することはなかった。
試合後、スティーブ・クラーク監督は「あれは100%PKだ。誰かがどこかで、なぜあれがPKでないのかを私に説明する必要がある。1点差の試合だっただけに、あそこでPKを獲得できていれば、また違った夜になったかもしれない」と、審判の判定に強い不満を示している。

さらに彼は、「これは欧州の大会であり、欧州の審判を起用した方が良かったのではないだろうか。VARは欧州で導入されたものだ。審判はピッチ上ではっきり見ていなかったかもしれない。ならば、そのような場面で介入しないVARに、いったい何の意味があるのだろうか。あれはPKだった」とも主張した。

指揮官が言及したのは、この試合で主審を務めたファクンド・テジョのことだ。彼は今大会、唯一南米から派遣されたアルゼンチン人の審判である。「なぜ欧州の審判でなかったのか?」というクラーク監督の疑問には、スポーツ専門サイト『GIVEMESPORT』が「UEFA(欧州サッカー連盟)とCONMEBOL(南米サッカー連盟)の協定によるものであり、逆に現在アメリカで開催されているコパ・アメリカには、イタリア人のマウリツィオ・マリアーニ審判が派遣されている」と答えた。 同メディアはまた、この連盟間の派遣が行なわれたのは前回大会(2021年)が初で、同じくアルゼンチンのフェルナンド・ラパリーニ審判は、奇しくもスコットランドがクロアチアに1対3で敗れたグループステージの一戦を主審として裁いていることも伝えている。

ちなみにこのテジョ審判は、2022年のカタール・ワールドカップでも笛を吹いているが、自身が裁いた準々決勝でポルトガルがモロッコに0-1で敗れた際には、ブルーノ・フェルナンデスが「まだ勝ち残っている国(アルゼンチン)の審判が我々を裁くなんて、なんとも奇妙だ。彼らは明らかに我々に不利な状況を作り出した。前半には、明らかなPKが見逃された」、またペペが「アルゼンチン人の審判が我々の試合を裁くなんて受け入れられない。賭けてもいい。この大会はアルゼンチンが優勝すると」と激怒したことでも話題になった。

話を今回のEUROに戻すと、スコットランドからは強い怒りを買うことになってしまったバイアブランカ出身の42歳。同じ英国のレジェンドストライカーであるアラン・シアラー(イングランド)も、コメンテーターを務める公共放送『BBC』で「あの判定は酷かった。私が見るに、明らかなPKだ。オルバンの右膝がアームストロングの左ふくらはぎに当たって倒している」と、クラーク監督に同意している。
しかし、テジョ審判の母国メディアであるアルゼンチンの日刊紙『LA NACION』は彼を擁護。「あれはPKではない。まず、アームストロングはオルバンを引っ張っている。そして、あのプレーの前にすでにアームストロングはバランスを崩していたし、オルバンの接触も相手を転倒させるほど強力なものではなかった」と、“欧州勢”に異論を唱えた。

また、自国の審判の起用に対する批判についても、「UEFAによって選ばれたはずのアルゼンチン人審判の能力を疑問視するような批判は、外国人排斥に近い。南米の審判とEUROで審判を務める審判の間に階級やレベルの違いがあるかのような言い分だ。さらに、クラーク監督は、テジョ審判がW杯でも試合を裁いたことを知るべきだ。また、クラーク監督がVARを担当していたスペイン人のアレハンドロ・エルナンデスについてはいっさい言及しなかったのも奇妙な話だ」と反論している。

構成●THE DIGEST編集部

© 日本スポーツ企画出版社