今月14日、開催第3回の子ども食堂「ほうぷけん」に、エプロンに身を包む若い女性の姿があった。
宇都宮市在住、野尻芽依(のじりめい)さん(21)。ほうぷけん開設を伝える記事を読み、ボランティアを買って出てくれた専門学校生だ。
親子1組だった2回目とは一転、子連れをはじめ高校生、民生委員ら16人が訪れた。盛況の中、食事の盛り付けや食器洗いにせわしなく動いた“初仕事”を終え、「楽しかった。卒業するまでは手伝えそう」と笑顔で振り返った。
この日は、近くに住むメディア関係者も調理などを手伝ってくれた。取材で知り合った市内子ども食堂の運営者も毎回のように顔を出してくれている。
「協力の輪」が少しずつ広がり始めている。
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「片手間だと続かないのではないか」
3回目を開催する10日ほど前。70代の男性民生委員から、今後の食堂運営を懸念する声が聞かれた。
胸の内を言い当てられた気がした。取材班3人での運営。いざ立ち上げると食材の調達や調理、会場の準備などにかなりの時間を割かれることが分かってきた。仕事を抱えながら少人数で継続させることの難しさを痛感していた。
協力者を増やすことは不可欠。だが「力になりたい」という善意ある人も、フルタイムのような関わり方には二の足を踏むだろう。
でも、片手間だったら。そもそも取材班による食堂の運営自体が片手間だ。
「職場が近いから仕事終わりに手伝えるよ」。取材班の家族からはこんな申し出がある。民生委員からは「手伝いたい人は多いはず」との声が聞かれる。地域には確かに善意がある。
遠方の人は訪れるだけでも大変だが、ほうぷけんから徒歩圏内の学校に通う野尻さんはあまり負担ではなさそうだ。
野菜をお裾分けする、ちょっと顔を出して子どもと話してみる-。ほうぷけんに関わってくれた大人たちのささやかな善意が、協力の在り方を示唆してくれている気がする。
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「3階にあると通りから見えづらい」「高齢者は階段を上るのがつらい」
来場者から寄せられた意見を踏まえて取材班は現在、地域の誰もが訪れやすいよう開催場所を再検討している。
子どもは育つ場所を選べない。行動範囲が狭いゆえ、貧困などの困難を抱えている時、まず手を差し伸べられる距離にいるのは身近な地域にいる誰かだ。
だからこそ地域の中に、善意の向かう先がほしい。子ども食堂でも子どもの居場所でもフードバンクでも、形は何であれ、子どもの身近に一つでも多くあるといい。
ほうぷけんもその一つとして、運営を続けたい。
たくさんの「片手間という力」が集まり、大きな希望となって地域の子どもを包み込む。そんな場所に育っていくことを願いながら。
(「希望って何ですか 続・貧困の中の子ども」は終わります)