新型コロナと経済再生の行方 共同通信社・高橋直人氏 緩い対策では持たない

共同通信社編集局次長 高橋直人氏

 新型コロナウイルスの感染が国内で確認されて1年。感染者数は増え続け、厳しい状況だ。
 7月、コロナで冷え込んだ消費を回復させようと「Go To トラベル」が始まった。10月に東京都が追加になり、その後から感染が増え始めた。それが原因かは諸説あり、専門家も移動中には感染しないと言っている。だが、旅行の楽しみのひとつは飲食。今思えば、原因のひとつだったのではないか。
 専門家には飲食集中の対策では駄目だという意見もある。政府が何か宣言をするときには、昨春の緊急事態宣言のとき並みに外出を制限するような状態を目指すべきだ。やるなら3~4週間、短い時間でやって、失われた経済活動の分は補償してしかるべき。緩い対策では多くの事業者が持ちこたえきれないだろう。
 国内旅行客の消費額は4~6月は1兆円だったが、「Go To トラベル」が始まってから、7~9月は6兆円を超えた。11月末までに宿泊した人は延べ6850万人。政府の3千億円の支出で3倍くらいの効果を生み、批判はあるがいい政策だと思う。感染者数が上がってきたときに、いったんやめておけば違う結果になっていたんじゃないか。コロナが収まりさえすれば「Go To」効果の威力は相当なものがあると思う。
 東京五輪・パラリンピックについて、開催可否のポイントはIOC総会が始まる3月10日までに感染者数がどうなっているか。聖火リレーが始まる同25日までに何らかの判断がされるとみている。収まらなければ代表選考にも支障が出てくるだろう。海外の観客をどうするか。医療体制確保も課題だ。3月に入ってからの動きを注視したい。
 長崎の経済を見てみると、日本の造船業は国策で大きな支援を受ける韓国、中国との競争の中、家電、繊維に比べれば健闘していると思う。経済状況がよくなり円安になれば、多少は日本に有利に働くだろう。製造業の生産高に占める造船業の割合が長崎は高い。地域を支えていくためにも頑張ってほしい。
 菅政権のデジタル化推進の流れも長崎にとって有利になる。IT系大企業がこぞって長崎に集まってきている流れは全国的にも珍しい。第5世代(5G)移動通信システムが普及する時代を目掛けて、大学で人材を育成し、誘致企業で活用する動きを増やしていってほしい。

© 株式会社長崎新聞社