新型コロナ 長崎県内初確認1年 「患者急増」医療一時危機に 接種体制構築急ぐ 

新型コロナウイルスワクチンを接種する医療従事者。コロナ収束に向け県民の早期の接種が課題となる=2月22日、諫早市永昌東町の諫早総合病院

 長崎県内で新型コロナウイルス感染者が確認されて14日で1年になる。陽性者は1613人を数え、37人が亡くなった。昨年12月からの感染「第3波」は収まったが、患者急増で一時、医療体制は危機に陥った。県や市町、医師会は「第4波」に備え、医療体制の充実とワクチン接種体制の構築を急ぐ。

 「どの程度で感染するのか不安は強かった」。昨年3月14日、県内で最初に感染者が確認された壱岐市。患者が入院した県壱岐病院の向原茂明院長は当時を振り返る。
 「第1波」(3、4月)「第2波」(7、8月)を経た「第3波」。今年1月中旬には長崎市を中心とする長崎医療圏で専用病床の約9割が埋まった。長崎大学病院ではコロナ病棟が不足し、新たな病棟を追加して医師や看護師を集中させた。コロナ以外の患者の入院は制限され、同病院の泉川公一感染制御教育センター長は「医療崩壊を実感した。不眠不休の医師もたくさんいた。あの経験はもうしたくないというのが医療従事者の思い」と明かす。
 第4波に備えた課題として、クラスター(感染者集団)が相次いだ高齢者施設の感染対策は「早急にレベルアップを図る必要がある」と指摘。患者を受け入れる病院を増やすことや、感染状況に応じた県民の感染対策徹底も挙げる。
 県などはこうした状況を受け、病床拡大や検査体制の充実を図ってきた。県によると、現在、検査能力は1日最大約2400件。コロナ患者を受け入れる医療機関は38、最大確保病床は421まで増やした。退院基準を満たした患者を受け入れる後方支援医療機関は69、無症状や軽症者向けの宿泊療養施設は12施設で384室確保している。

ワクチン接種スケジュール

 感染疑いのある発熱者が検査や診察を受けられる「診療・検査医療機関」は県内の医療機関約1400のうち、373を県が指定している。一方、県医師会は地域のかかりつけ医で検査が受けられる体制を整備し、約480の病院・診療所で検査が可能になった。
 市町ではワクチン接種の準備が進んでいる。中村法道知事はコロナ収束に向け「いかにスムーズに早期に接種を受けていただけるかが当面の一番大きな課題」と強調する。4月に入ると65歳以上の高齢者約44万人の接種が控え、基礎疾患のある人、60~64歳の人、一般人と順次拡大される。「一刻も早くこの手順を終えて感染症を克服し、通常の経済活動ができるようにしていかなければならない」と力を込める。
 既に医療従事者の接種が始まっているが、高齢者の接種からは市町が主体となり、各地の医師会が協力する。県医師会の森崎正幸会長は「これまでに経験したことがない規模で、現場は混乱するだろう。協力して取り組まないと人手が足りない」と述べ、各地で応援に回れる医師、薬剤師、看護師を募集して「ワクチンチーム」を組織し、市町から要請があれば派遣したいとしている。


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