終業式

 〈おい三年よ/いっしょに四年になりたいか〉〈いままでみたいなちょうしでは/まあ、むりだな〉…バナナを半分しか食べられない「サッちゃん」や「ねこふんじゃった」の作詞でも知られる詩人で芥川賞作家の阪田寛夫に「三年よ」という作品がある▲一から二、二から三は漢数字に横棒を1本書き足せばいいけれど、三と四はそうはいかない。小学校では高学年の仲間入り、責任だって重いよ…と3年生をおどかしつつ温かく励ます詩だ。〈そろそろいくぞ/なくなよ三年〉▲先生もクラスメートもマスク姿の学級編成、保護者は入場制限でプログラムも圧縮された運動会、歌声のない音楽の時間…どの学年もどの子も、これまでになく窮屈な1年間を過ごしてきた令和2年度の学校現場▲「お昼の時間も机をくっつけずに、みんなで前の方を向いて黙々と食べるんです。なかなか仲良しになれないかも」-ある中学校の先生が教えてくれた。杞憂であってほしい、と願うばかり▲「安易な前例踏襲を問い直す機会になりました」は大人の総括だろう。いつもの年と違う工夫を凝らした分だけ、形の違う思い出が残った…学年や年齢に応じてそんな感想も持てているといい▲今日は多くの学校で終業式。満開の桜に彩られ、見守られて学年の総まとめの1日だ。(智)

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