被爆2世の2人デビュー 「家族・交流証言者」定期講話

被爆2世の2人が初めて発表した「家族・交流証言者」定期講話=長崎市、長崎原爆資料館

 被爆体験を語り継ぐ「家族・交流証言者」の定期講話が28日、長崎市平野町の長崎原爆資料館であり、諫早市の河野正二さん(71)と福岡県飯塚市の野田隆喜さん(63)が新たな「証言者」としてデビューした。
 2人はともに被爆2世。河野さんは、12歳の時に爆心地から3.3キロの鳴滝町(当時)の自宅で被爆した田川博康さん(87)の体験談を受け継いだ。田川さんは、足に大けがを負った父を滑石の臨時救護所に連れて行ったが、大工用のこぎりで足を切断する手術を受けた父は数日後に死亡。「救護所に連れて行かなければ死ななかったんじゃないか」と長く苦悩を抱えた田川さんの人生を伝えた。
 河野さんは「平和は与えられるものではなく自分たちの力でつくるもの。田川さんの話を聞いて(平和な世界に向け)小さなことでも自分のできることを真剣に考えて」と訴えた。
 野田さんは原爆によって人生が一変した父、和良さんの体験談を披露。原爆投下後、和良さんは生き残った弟と2人で福岡県の筑豊へ移り住み、そこで原爆症、貧困、差別に苦しんだ。講演後、野田さんは「県外にも息を潜めて苦しんできた被爆者がいることを伝えていきたい」と話した。
 「家族・交流証言者」は高齢化する被爆者の代わりに家族や家族以外の希望者らが体験を語り継ぐ活動で、証言者は現在、県内外に41人。

© 株式会社長崎新聞社