3400人ヘの祈り 筆に込め 原爆死没者名簿の記入始まる

原爆死没者に思いをはせながら筆を進める森田さん=長崎市職員会館

 長崎原爆の日(8月9日)の平和祈念式典で奉安される原爆死没者名簿に、昨年8月以降に亡くなったり新たに確認されたりした被爆者らの氏名と享年、命日を書き加える筆耕が1日、始まった。約3400人分を書き加え、7月末までに終える予定。
 担当するのは、今年で20年目となる書道講師で被爆2世の森田孝子さん(73)=長崎市葉山2丁目=。桜町の市職員会館で一文字一文字を丁寧に書き記した。1日120~140人分を書き入れていくという。
 森田さんは新型コロナウイルス禍に触れ「穏やかな日常の大切さ、平和の尊さをあらためて感じている。原爆死没者の冥福を祈りながら続けたい」と語った。
 市によると、原爆死没者名簿は1968年から作成。2018年からは国が定める被爆地域外で原爆に遭った「被爆体験者」も対象に加えている。昨年の式典までに奉安されたのは長崎原爆18万5982人、広島原爆75人。身元不明犠牲者のために用意した無記名の1冊を含む計191冊の名簿は国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館に納められている。

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