被爆地出身の学生ら 東京で新団体発足 平和活動の営利化で活動持続 中村さん(長崎)と高橋さん(広島)

発足の経緯や、活動の抱負を語る中村さん(左)と高橋さん

 広島・長崎両被爆地で生まれ育ち、平和活動を続けてきた若者たちが、核兵器廃絶を目指して情報共有と活動の場をつくろうと、5月に東京で新たな団体を発足させた。その名も「KNOW NUKES TOKYO(ノーニュークストキョー)」。ボランティアと捉えられがちな平和活動を営利化することで、持続可能な取り組みとすることを目指している。
 共同代表は、元高校生平和大使で上智大3年の中村涼香さん(20)=長崎市出身=と、広島で署名活動などを続けてきた慶応義塾大3年の高橋悠太さん(20)=広島県出身=。
 2人は大学進学を機に上京、平和活動を通して知り合った。中村さんは「大学進学後も平和活動を続けられると思っていた」が、東京で人とのつながりなどが一切なく、1年生の間は具体的な活動に踏み出すことができなかったという。
 2人は、東京に核兵器廃絶に向けた「集いの場」がないことに問題意識を持った。幼い頃から受け止めてきた被爆者の思いを無駄にせず、卒業後も活動を継続できる場をつくろうと、設立を決めた。
 団体名は、核兵器問題を「知る」を意味する英語の「KNOW」と、核兵器の否定を意味する「NO」、さらに「No New」(当たり前)で核兵器について知ることを「当たり前」にし、社会に浸透させるとの思いを込めた。
 平和活動に取り組む他の若い世代の団体と一線を画し、「持続可能な活動」を目指す。学生団体ではメンバーの卒業や進学を機に、活動の継続が困難になることが少なくない。高橋さんは、平和活動が周囲からボランティアと思われている面もあると指摘し「ポケットマネーでは続けられない。活動の中でお金を生み出し、携わる人を育み続けなければいけない」と強調する。
 2人は、9月26日の国連が定める「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」に向け、イベントを計画中。長崎や広島、愛媛の3県で大学生らが国会議員らに面会し核兵器禁止条約への考えなどを尋ねる「議員面会プロジェクト」の窓口も担いながら、活動を進める。
 中村さんは「社会問題に関わり続けることを、大学生の進路の一つに確立させたい」、高橋さんは「日本のどこにいても、核兵器の問題や被爆者のことを考えるきっかけにしていきたい」とそれぞれ決意を語った。

© 株式会社長崎新聞社