海水プール「太塔プール」 今夏で幕 住民ら最後のペンキ塗り

最後のペンキ塗りをする児童たち=西海市、太塔プール

 長崎県西海市大島町の太田尾地区にある海水プール「太塔プール」が今夏、49年の歴史に幕を閉じる。来月のプール開きを前に19日、住民が清掃と最後のペンキ塗りをした。
 プールは市の補助を受け太田尾、塔ノ尾、中戸の3自治会が運営。運営委員会の村田利夫会長(67)によると、大島炭鉱(1970年閉山)の影響で地盤沈下があり、砂浜や田んぼが消失。安全な遊泳場所を求める声が上がり、72年に旧西彼大島町が大島西小太田尾分校のグラウンド跡に15メートルプールと幼児プールなどを整備した。
 水道代などの経費や消毒などの手間を抑えるため、住民が目の前の海からポンプで海水をプールにくみ上げ、保護者は交代制で監視を担った。最盛期には「芋を洗うほど」(村田会長)の児童が集まり、盆踊りや青少年健全育成を目的に水泳大会も開かれた。お年寄りも足腰のリハビリで利用していたという。しかし、3地区で50人ほどいた児童は十数人に減少。施設の老朽化もあり運営委が廃止を決めた。
 この日は児童や保護者ら約20人が集まり、ごみや汚れを清掃。ローラー片手に1時間ほどペンキを塗り、プール内は鮮やかな黄色になった。親たちは「午前中プールに行った後、昼寝が日課だった」「たまに魚が紛れ込んでいた」などと思い出話に花を咲かせた。親子2代でプールを利用してきた太田尾育成会の森山佳子会長(40)は「塩水が目に染みたが、ここで泳げるようになった。なくなると思うと寂しい」と話した。

半世紀近い歴史に幕を閉じることになり、更衣室とシャワーの前で写真に納まる親子ら

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