容疑者記入の「被疑者ノート」、警察からの黒塗り指示は「接見の侵害」 弁護士が神奈川県を提訴

神奈川県警

 警察署の留置場で、弁護士とやりとりをするために容疑者が記入したノートの内容を警察官に削除させられたのは、接見交通権や秘密交通権の侵害に当たるとして、神奈川県弁護士会の弁護士が22日、国家賠償法に基づき県に対し350万円の損害賠償を求める訴えを横浜地裁に起こした。

 訴状によると、削除させられたのは容疑者が取り調べの状況をメモして弁護士と接見する際に役立てるための「被疑者ノート」の一部。日弁連が作成したノートで、弁護士は5月中旬、窃盗容疑で逮捕された男性の国選弁護人に選任された際に差し入れていた。

 このノートの記載について留置係の警察官は同月下旬、「取り調べだけの記録を書くものでそれ以外のことは書いてはいけない。書いてあることを消してください」と求め、男性が拒否すると別の警察官が「お願いではなく決まり事だから」と話し、男性はボールペンで黒塗りにしたという。

 黒塗りにした部分には、母親などとの面会時に警察官から不当な扱いを受けたと感じた内容を記載していた。弁護士は、違法な黒塗り要請によって接見交通権や秘密交通権を侵害され、精神的苦痛を被ったと主張している。

 県警監察官室は「訴状が届いていないためコメントできない」としている。

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