斎藤佑樹〝最速132キロ〟の新境地 実戦復帰で示した現役続行の覚悟

背水の斎藤は何を思う…

背番号「1」が帰ってきた。日本ハムの斎藤佑樹投手(33)が、12日のイースタン・DeNA戦(鎌ケ谷)で6回から救援登板。269日ぶりとなる実戦復帰を果たし、1イニングを無安打無失点に抑えた。ただこの日の最速は132キロ。復帰の遅れもあって、球界内からはいよいよ「引退説」が飛び出している。背水の佑ちゃんは今、何を思うのか――。

昨年10月16日のイースタン・巨人戦(ジャイアンツ)以来、久々の実戦復帰となった斎藤。6回から救援登板すると、早速クリーンアップとの対戦となった。それでも落ち着いて3番・戸柱を120キロの変化球で右飛、続く峯井を129キロ直球で三ゴロに打ち取ると、最後は益子も130キロの直球で三ゴロ。難なく三者凡退で復帰マウンドを飾った。

打者3人でぴしゃりと締めると、スタンドからは「いよしっ!」との歓声とともに大きな拍手。後ろを守っていた杉谷からも「オッシャー! ナイス佑樹さん!」と声をかけられ、ハイタッチを交わした。

試合後の斎藤は安堵の表情だった。「シーズンも半ばに入ってきたので、早くチームの戦力になれるようにというのと、とりあえず今日は結果を意識して投げました。(投げ終えて)ほっとはしています。すごく緊張したので」。普段は緊張したそぶりを見せない斎藤だけに、この日の登板への強い思いが見て取れた。

昨季悪化した右ヒジ痛により一時はトミー・ジョン手術に踏み切るとの観測もあったが、右腕は「PRP療法」を中心とした再生医療をオフに選択した。早期復帰のためあえてメスを入れずリハビリに励んだ結果、今春キャンプではブルペンで200球を投げるまでに回復。時間はかかったが、実戦で投げられるレベルまで戻してきた。

とはいえ、この日の球速は130キロそこそこ。もう前半戦は終わる。「スケジュール感としてはもっと早く復帰できたかなと思いますけど、ただやっぱり僕の中ですごく焦りがありました。欲を言えばもっとスピードを出したかったです」と素直な思いを漏らしたが、球界の反応は冷淡そのものだ。「年齢もあるし、球速も全盛期とくらべて戻る様子もない。今季で引退するのでは…」とささやかれるのも無理はないだろう。

それでも近しい関係者は「引退はあり得ないですよ」と言い切る。「斎藤は『燃え尽きるまで野球をやりたい』と常日頃から語っていますし、あれだけの大けがをしながらもチームに残してくれた球団に恩返ししたい気持ちが強いはずです」

ファンからすればショッキングとも言える球速の低下についても、斎藤本人はそれほど意に介していない様子だった。「感覚的にはこれ(130キロ前半)がマックスですね。もしかしたら試合の中で上がっていく可能性はありますけど」とサバサバ。「今日もいろんな投手をブルペンやベンチから見てましたけど、やっぱりスピードが遅くても打ち取れるボールはたくさんあるなと思ったので、そういう意味ではスピードを求めすぎてもな、とは思いました。駆け引きみたいなので勝負していかないといけないかなと思います」と〝ありのままの自分〟で勝負していく覚悟を示した。

「去年、ヒジの痛みが出て、野球をやめなくちゃいけないと思ってから、今日に至るまで、野球をやらせてもらっていることへの感謝を毎日感じていました」と最後はしみじみ振り返った斎藤。どこまでも温かい球団とファンの思いに報いるためにも、次は一軍のマウンドに立たなければならない。

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