証券会社を選んだらどの口座を選ぶ?NISA口座、特定口座、一般口座の違いとは

前回まで証券会社の選び方について解説しましたが、今回はその最終回です。証券会社を選んだ後は、取引口座を選ぶ必要があります。「一般口座」と「特定口座」、どちらを選べば良いのでしょうか。「NISA口座」はこれらとどう関係するのでしょうか。


【第1回】なぜ証券口座を開く必要がある?証券会社選びの決め手を突き詰めて考える

【第2回】証券会社に口座を開くなら基準はどこ?「個人の証券取引はオンライン証券を選ぶ理由」
【第3回】複数の証券会社に口座を持つことの意味はどこにある?実際の使い方

とりあえずNISA口座を持つ

証券会社をようやく選んだとしても、実際に株式や投資信託を取引する際には、どの口座で取引するのかを決める必要があります。

まず「課税口座」か「非課税口座」のどちらを選ぶかです。株式の値上がり益や配当金、投資信託の値上がり益や分配金には原則として20.315%の税金がかかります。それを非課税にするのがNISA口座です。

現行NISAは年間120万円の非課税枠が設けられており、この金額内で株式や投資信託を購入した分について、非課税期間である5年間で発生した値上がり益や配当金、分配金に関しては、20.315%の税金がかからずに済みます。

ただし現行NISAの投資可能期間は2023年までになります。したがってこれから2023年中までに現行NISAで投資した場合は、5年の非課税期間が終了した時点で、現行NISAは利用できなくなります。前述したように、非課税枠は年間120万円ですから、2021年から2023年まで毎年NISA口座を使って投資すれば、合計で360万円を非課税で運用できます。

では、その後はどうなるのかですが、2024年から「新NISA」がスタートします。現行NISAに比べて仕組みがやや複雑ですが、新NISAに乗り換えることによって非課税期間をさらに5年間延ばすことが出来ます。ちなみに新NISAの非課税枠は122万円なので、2024年と2025年を新NISAで運用すれば、合計で604万円分の非課税枠を持つことができます。

いずれにしても、利益に対して20.315%の税金は結構重いので、とりあえずNISA口座は作っておいても良いでしょう。

特定口座の「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」のどちらを選ぶ?

NISAは最長5年の非課税期間しかありませんし、この非課税期間を終えて新NISAに乗り換えたとしても、その非課税期間も最長5年という有期限なので、どこかで非課税期間は終了します。それに年間120万円という枠(新NISAは122万円)があるので、それを超える資金で投資する分は、課税口座を用いることになります。

課税口座は「一般口座」と「特定口座」に分かれています。

基本的に株式や投資信託の値上がり益は確定申告する必要があります。でも、それが面倒という場合は、預貯金の利子課税と同じように20.315%を源泉徴収してもらうことで納税を終わらせることが出来ます。

源泉徴収してもらいたい場合は、特定口座を選びます。なお、特定口座は「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」を選択できますが、「源泉徴収あり」を選んでください。こうすれば面倒な納税手続きをいっさいすることなく、保有株式を売却、もしくは投資信託を解約して売却益が得られた場合には、それに対して税金分が徴収され、その残金が口座に反映されます。

投資初心者の場合は、とりあえず特定口座(源泉徴収あり)を選んでおけば良いでしょう。

では、「特定口座(源泉徴収なし)」を選ぶ意味は何かですが、確定申告する手間がかかっても、こちらを選んだ方が有利になるケースがあります。それは、会社に勤めて給与をもらっている会社員で、年末調整される給与以外の所得が年間20万円以下であれば申告不要という制度を利用できることです。

つまり給与以外の所得が一切なく、株式や投資信託の売買益が年間20万円以下の場合は、確定申告する義務がないので所得税を納めずに済みます。ただし住民税の申告と納税は必要なので、その手間がかかります。

ちなみに「特定口座(源泉徴収なし)」と「特定口座(源泉徴収あり)」の変更は可能です。

源泉徴収なしから源泉徴収ありへの変更は、その年(1月1日~12月31日)の最初の売却・解約の前まで変更できます。一方、源泉徴収ありから源泉徴収なしへの変更については、その年(1月1日~12月31日)の最初の売却・解約の前に加え、最初の配当・分配が行われる前まで可能です。つまり、その年の損益状況を確認して、売却益が20万円に満たないから源泉徴収なしに切り替えることは、事実上不可能になります。

一般口座の利用は考えなくてよい

では、一般口座を選ぶ意味はあるのでしょうか。

これは、普通の投資家には不要といっても良いでしょう。そもそも一般口座を選ぶと証券会社に「年間取引報告書」を作成してもらえないので、自分自身で売買損益をすべて記録しておく必要があります。

これが「特定口座(源泉徴収なし)」であれば、一般口座と同じように自分で確定申告をする必要はありますが、特定口座は証券会社がその年の損益状況を記録した年間取引報告書を作成してくれるので、それでも確定申告の手続きは多少なりとも簡便になるのですが、一般口座はすべての売買状況を自分で記録しなければならないので、非常に手間がかかります。

それでも一般口座を選択できるようになっているのは、特定口座で取引できない有価証券、たとえば未上場株式に投資する際に使います。未上場株式への投資は、そう簡単に出来るものではありませんから、個人投資家はそもそも一般口座の利用は考える必要がありません。

© 株式会社マネーフォワード