ブライアン・メイ、リマスター・アルバムから「華麗なる復活」を先行公開。本人が語る当時の想い出とは

2021年8月6日にリマスターや貴重な音源が追加されて発売される、ブライアン・メイ初のソロ・アルバム『Back To The Light(邦題:バック・トゥ・ザ・ライト~光にむかって~)』から「Resurrection(邦題:華麗なる復活)」が公開となった。新たにリマスターされたミュージック・ビデオも公開となった。

<動画:Brian May – Resurrection (Official Music Video Remastered)>

ブライアン・メイの名曲「Resurrection」は、モンスター級の力作だ。  猛烈な勢い、パワー全開のドラムス、幾重にも重なったハーモニー、そして高らかに鳴り響く荘重なギター・サウンド。この「Resurrection」は、1992年に発売されたメイのソロ・アルバム『Back To The Light』の中でも、特にファンの間では最高傑作と言われている。

ブライアン・メイ・バンドのライヴで演奏された「Resurrection」は、ブライアンの奏でる壮大なシークエンス「Guitar Extravagance」の中心にフィーチャーされており、崇敬を集めるクイーンの名曲「Bohemian Rhapsody」の爆発的ロック・クライマックスと肩を並べていた。1993年にシングルとして発売された「Resurrection」は、ブライアンの言葉を借りれば「聖書のような激しさ」を持つビデオと共に、全英シングル・チャートにランクインを果たしている。

だが、この曲の起源は、宇宙的な壮大さというよりも、むしろ彼の個人的なところにあった。歌詞には、私生活に大きな変化があった時期、目的意識と自我を再び見出そうとしていたブライアンの苦闘を反映。この曲の制作には、親しい友人やバンド・メンバーが極めて重要な役割を果たしていたことも証明されている。

 

コージー・パウエルとの交換

本曲のバッキング・トラックは、故コージー・パウエルの1992年のアルバム『The Drums Are Back』に、「Ride To Win」というタイトルのインストゥルメンタル曲として別の形で収録。「交換したんだ!」と、メイは説明する。

「コージーが背中を押してくれたんですが、天からの贈り物でした。僕は、新たな人生を見つけようという自分の欲求を表現できる何かを探しているところだった。そしたら突然コージーが、〈モノ・スタジオ〉で作ったこのトラックを持ってやって来たんです。そこは、彼の特徴である重厚なドラム・サウンドを作り上げるためのお気に入りの場所でね。そして、彼が『なあブライアン、これどう思う? 僕のために演奏してくれないか?』と言ってきたんです。僕が『いいね、君の望みなら何でもやるよ』と答えたら、『じゃあ、君のソロ・アルバムにも入れたい?』と聞いてきた。僕は『ああ、それはいいね』と答えて、それで全てを共有し合いました。そして、即座にインスピレーションを得て、この“Resurrection”を書いたというわけなんです」

コージー・パウエルとブライアン・メイ © Duck Productions Ltd

 

ヴォーカリストとしての試金石

熟練ロック・ミュージシャンであるドン・エイリーがキーボードに加わり、この曲に全力で取り組んだブライアンとコージー・パウエル。ブライアンにとっては、クイーンの伝説的フロントマンであるフレディ・マーキュリーの死去後、自身のヴォーカリストとしての能力を占う試金石ともなった。「とことんオーバーダブを重ねたんです」とブライアン。

「恐らく、“Bohemian Rhapsody”よりもオーバーダブの回数が多いんじゃないかな。僕も自分自身を追い込んでいたんです。自分がどこまでやれるのか、知りたいと思っていた時期でした。僕は突然、フレディを喪った。今は自分で自分の歌を歌おうとしている。どれほど高い所まで行けるのか? どこまで激しくやれるのか? どれだけ幅広い声域で歌えるのか? 今の僕にそれが出来るとは思わないけど、自分が到達した場所には満足しています。それはあの時、僕がたどり着かなくてはならなかった場所だったんです」

厄介な最高音のレの音を出すために奮闘したことについて、ブライアンは現在、次のように振り返る。

「あそこまで出来たということが、今も信じられないんです。血の滲むような思いでしたよ」

 

クイーンでは使わなかったギター・プレイ

さらに、彼はそこで終わらなかった。ロック史上最高レベルに革新的で冒険的かつ象徴的なギター・ワークを既に確立しているにもかかわらず、ブライアンは自らの演奏の幅を広げる方法を見出したのである。

「ジョー・サトリアーニのギターを使った箇所もあるんです。つまり、あの大きくてメタリックなジョー・サトリアーニのギターですね。すごく切れ味が良いんですよ。天井知らずに、僕はタッピングしまくっていた。普段クイーンではやらなかったことですね。クイーンはとてもメロディックだから、僕の辞書にタッピングという言葉はあったんだけれど、クイーンではそれを使う場所がめったになかった。僕はとにかく、とことんまでやってみたんです。この曲は、僕のギター・プレイを推し進めるという意味でも、空に届くほど高い目標に向かって突き進んでいる。 また、この曲には、短いながらも強烈なパウエル・ドラム・ブレイクもあって、驚いたことに、それは僕の自宅スタジオ〈フレンチ・ルーム〉で録音したものなんですよ。コージーもまた、自分を限界まで追い込んでいたんです」

今回のリイシューに際し、入手可能な最高の映像素材からリマスターを行ったビデオは、ワイルドで自由、そしてカタルシスに満ちている。ブライアン・メイ・バンドが1993年4月6日、パレス・シアターでライヴを行った前後にロサンゼルスで撮影されたこのビデオでは、当時の最新コンピュータ・グラフィックスを駆使。燃え盛る炎と爆発する惑星の中で、ブライアンとコージーが激しい演奏を炸裂させている。

「H-Gun[*シカゴ拠点の音楽ビデオ制作会社。1980年代末~1990年代に多数の名作を世に送り出した。2001年に解散]のチームとのコラボレーションで、この曲を別の宇宙に連れて行くような映像を作ったんです。コージーと僕はLAの映画スタジオで、化学薬品を使った焚き火に囲まれて一日を過ごした。ならず者やヒーローになったりして、すごく楽しかったよ」

現在この曲について語るメイは、その過剰主義的手法とメッセージを次のように支持している。

「僕が自分の葬式でかけてもらいたいのは、この曲。恐らくね。なぜならこの曲には、抗いがたいほどの強い信念が込められているからです。人生において行く手に巨大な障害が立ちはだかった時、それを乗り越えるのに必要な信念です。僕はこれをとても誇りに思っているんです」

Written by uDiscover Team

© ユニバーサル ミュージック合同会社