会社のため… コロナ禍、心理付け込む巧妙な手口 「融資保証金詐欺」被害者の証言

被害女性は融資を受けようと、男に言われるまま現金を振り込んだ(写真はイメージ)

 融資するとの文書をファクスなどで送り、保証金名目に現金をだまし取る「融資保証金詐欺」の被害が、県内で相次いでいる。約43万円の被害に遭った佐世保市の30代自営業女性を取材すると、お金を借りたい人の心理に付け込み、数日間にわたって丁寧なやりとりをして信じ込ませる巧妙な手口が見えてきた。

 6月中旬。女性が経営する会社の事務所に「中小企業特別支援融資」と記されたファクスが突然届いた。担保は不要、貸付利率は年率0.83%。新型コロナウイルスの影響で会社の売り上げが伸びず、新規事業を早く展開したいと考えていた矢先だった。
 「借りられるかな」。ファクスにあった電話番号に連絡すると、男が出てきた。男は丁寧に応対し、審査のため、会社情報や融資の目的などを書いてファクスを送り返すことを指示した。
 「審査が通りました」。後日、男から連絡があり、規約のような文書を3枚程度送ってきた。「これはしっかり見てください。メモを取ってください」。女性は男が言う注意点を一つずつ、書き残した。
 そして男は、返済が滞ったときのため、保証会社に対して、5カ月分の返済額計約43万円をまとめて払うよう要求。それを払えば、すぐに800万円の融資が受けられると説明した。女性は6月下旬に振り込んだが、約束の融資額は入ってこない。連絡すると、「バタバタしているので、次の日に連絡します」と言われた。
 翌日、男は「(融資会社の)自分たちにも払ってもらわないと」と言い出し、今度は、融資会社に対して、融資額の10%の80万円を請求した。説明された内容と違うことを指摘すると、男はこう答えた。「説明が悪かった。自分たちのミスなので、こちらで半額出します。ですが、(契約を)キャンセルして、返金してもいいですよ」
 もう少しの手続きで融資が受けられる。詐欺だと疑いもしなかった。女性は、さらに40万円の振り込み手続きをした。だが、入金はないまま、男はさらに金銭を要求してきた。
 また払わないと-。焦っていたとき、連日の振り込みを不審に思った銀行から連絡があった。「大丈夫ですか。変なところに入れていませんか」。こう言われて、やっと詐欺だと気付いた。追加の40万円は銀行が止めてくれていた。だが、親戚から数日後に返す約束をして借りたお金もあり、車を売ってなんとか返済した。
 警察には、もう連絡しないよう言われた。しかし、「解約したいと言えばお金が返ってくるのでは」といちるの望みを掛け、男に電話した。だが、もうつながらなかった。
 ファクスに電話に振り込みの繰り返し。融資を受けたい一心で、詐欺を疑う余裕もなかった。「会社のために一生懸命だった。よく考えて行動すれば良かった」。悔しさと、情けなさが押し寄せた。

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