長崎商業が劇的な逆転V 9回2死から同点 延長制す 第103回全国高校野球長崎大会 最終日

【決勝、長崎商―大崎】9回表長崎商2死満塁、右前に同点打を放った久松(右)、10回表長崎商2死二塁、左前へ決勝打を運んだ横田=県営ビッグNスタジアム

 終盤にドラマが相次いだ今大会を象徴する決勝だった。勝った長崎商、負けた大崎の選手をはじめ、祈るように戦況を見守った多くが劇的な展開に涙した。「奇跡を起こしてくれた。子どもたちの素晴らしさに感動した」。長崎商の西口監督も男泣きに泣いた。
 3-4で九回2死無走者。六回以降、大崎の2番手左腕勝本から1人の走者も出せずに土俵際に立たされた。だが、これが高校野球の怖さ、面白さ。澤山、大町がともにフルカウントから四球を選び、大坪の内野安打で満塁になった。打席には指揮官が「左投手に強くてスタメン起用も考えた」と評する久松。途中出場でも「緊張はしなかった」と強気だった。
 初球を見送った後、積極的に振ってファウル二つで1ボール2ストライク。次の低めの変化球に手が出そうになりながらも必死にバットを止めて、5球目の外角直球を逆らわずに右前へ運んだ。「絶対に自分が決めてやると思った。(全校生徒の)大応援が力になった」。土壇場の同点打に、三塁側の黄色いメガホンが揺れた。
 決勝打は十回2死二塁から横田。「とにかく迷いを捨てた。先輩たちの顔も思い浮かべて気持ちを乗せて振った。約束を果たせた」。昨夏も主力として一つ上の先輩と甲子園を目指したが、コロナ禍で失った。腐らずに戦った独自県大会は準々決勝で大崎にサヨナラ負け。その悔しさを大一番の左前打で晴らした。
 終わってみれば今大会チーム1試合最多の12安打。例年、守備の印象が強いチームが、打力でも逆境をはね返した。勝利後のインタビュー。主将の青山は大会開催に感謝した上で言った。「甲子園でも勇気や感動を与えられるようなプレーをしたい」。久しぶりの有観客のスタンドが、その言葉にまた沸いた。


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