大雨被害 長崎県内160カ所 道路寸断いつまで 住民ら長期化懸念

崩壊した道路脇に設置された仮設の歩道を渡る地域住民=長崎市宮摺町

 8月11日から続いた記録的な大雨で、路面崩壊など幹線・生活道路の被害が長崎県内各地で相次いだ。県河川課によると9月2日現在、公道の被害は160カ所。台風が続いた昨1年分に相当する。2日午後6時現在、国道と県道では車両の全面通行止めが7カ所で続いている。復旧まで長期化が懸念される箇所もあり、地域住民には通勤通学や通院、買い物など生活上の負担と不安が次第に重くのしかかっている。
 「久しぶりの病院。(道が崩れるまでは)週2回行っていた。年寄りだから行くのが大変」
 2日午前9時前。ぱらぱらと雨が降る中、長崎市大崎町の農家の男性(83)は茂木町の病院に向かうため、仮設の歩道を渡り、約300メートル先の宮摺バス停に歩みを進めた。
 8月13日未明、茂木地区を通る主要地方道野母崎宿線が宮摺町で長さ約50メートル、幅約5.5メートルにわたって崩壊し、道路が寸断された。
 崩壊箇所の南に位置する大崎、千々両町にはそれぞれ250人前後が暮らす。住民が病院や金融機関、スーパーや学校、仕事場などがある市中心部方面に向かう際、利用する路線バスは運休した。車で向かうにも大きく迂回(うかい)しなければならず、デイサービスの送迎がなくなった世帯もある。自治会長らによると、親戚や近所の人と車を乗り合わせたり、病院から薬を郵送してもらったりするなどして、しのいでいるという。
 県は崩壊した道路に仮設の歩道を設置し、8月31日から徒歩での通行は可能になった。市は新学期に合わせて9月1日から、バスが通れなくなった代わりに予約制で無料の臨時タクシーの運行を開始。仮設歩道まで運び、歩道を通ってバス停まで歩けばバスで移動できるようになった。ただ崩壊した道路は地質調査中で、車が通れるまでの見通しは立っていない。
 ビワ栽培が盛んな同地区。宮摺町の農家のうち約30世帯は、崩壊現場の先に畑を持つという。その一人、岩﨑祐一さん(61)は盆明けから9月にかけては「来年の収穫量を左右する1年で一番大切な時期。肥料をやったり芽の数を制限したりする」と明かす。通行止めになって以来、片道5分だったところを1時間ほどかけて毎日通っている。だが、迂回路の運転の負担が大きく、畑に行けていない人もいるという。
 西海市では市道41カ所が被災した。うち12カ所は仮設も含めて復旧したが、車の乗り入れができず困窮している世帯もある。
 同市西彼町の自営業、松本博之さん(67)宅は市道の行き止まりにある一軒家。市道が長さ約120メートルにわたって崩れ、唯一の迂回路は自宅と裏山を結ぶ山道。夜間は危険なため、帰宅が遅い日は夫婦で親戚宅に身を寄せている。
 西海市建設課は「市内の被災件数が多く、災害査定に必要な現地調査に向け業者などと調整を進めている」と理解を求める。松本さんは「復旧への道筋が分からず不安。今後の生活も見通せない」とため息をついた。

主要地方道野母崎宿線
崖崩れが発生した市道=西海市西彼町

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