出会いの大切さ

 東京パラリンピック卓球(知的)で8強入りした浅野俊選手(PIA)は中学時代、2人の熱い先生に出会った。2人は彼の障害を考慮した上で、親身になって進むべき道を考えてくれた▲彼がパラ卓球の存在を知ったのは西彼長与町立高田中在学時。当時は障害を受け入れる気持ちになれず、その大会に出ることを嫌っていたが、先生たちは出場を強く勧めた。「進路に役に立つかもしれない。君なら日本一になれる可能性もある」と▲卓球自体を続けることさえ迷っていたころ。乗り気ではなかったが、障害者の大会に出てみると、いきなり結果が出た。パラの指導者たちの目に留まった。新たな道が開けた▲卒業後は瓊浦高でインターハイを目指しながら、障害者大会でも活躍。就職先にも恵まれ、20歳にして知的クラスのトップ選手になった。そして今夏、世界の8強入りを果たした▲彼の両親は今、息子の成長を喜ぶと同時に、感謝の言葉を忘れない。「金﨑良一校長先生と黒川絵理先生がいなかったら、卓球をやめていたかもしれない。先生たちに出会えて本当に良かった」▲先を見据えて懸命に説得した先生、受け入れて前に進んだ家族。こんな出会いが増えればいいな、と心から願う。パラアスリートが躍動した東京大会はきょう5日、閉幕する。(城)

© 株式会社長崎新聞社