東京パラ 車いすバスケ男子「銀」 鳥海、川原 輝いた「長崎の宝」

2014年長崎がんばらんば大会で銅メダルを獲得した長崎県選抜チーム。当時高校生だった川原、鳥海もメンバー入りしていた

 東京パラリンピックで過去最高の銀メダルを獲得した車いすバスケットボール男子の日本。主力として活躍した鳥海連志(22)=パラ神奈川SC=と川原凜(24)=千葉ホークス=の原点は、古里長崎にある。中高生時代の2人を大切に育て、一緒に汗を流した地元の先輩や関係者たちは、この快挙を自分のことのように喜んだ。長崎県車いすバスケットボール協会の山田健一前会長(70)は「2人は長崎の宝。大舞台で堂々とした姿が誇らしかった。地元から後に続こうという選手が出てくるのが楽しみ」と感無量の様子だった。
 鳥海は西海市立大崎中1年からクラブチームの「佐世保WBC」に所属。川原は長崎市立黒崎中時代に「長崎サンライズ」の練習に参加し始めた。「誰よりも闘争心があった」「負けず嫌いで向上心が強かった」-。先輩たちは彼らの中高生時代をこう評する。
 ちょうどそのころは、県全体が2014年全国障害者スポーツ大会(障スポ=長崎がんばらんば大会)に向けて強化していた時期。将来性を見込まれた2人は県選抜チームに呼ばれ、先輩たちとともにたくさんの経験を積んだ。
 教えれば教えるほど「もっと教えて」と向かってきて、やればやるほど素直に吸収していった10代の2人。県選抜の強化の中心で、佐世保WBCのリーダー格だった西田聡さん(53)は「一番の成長期に地元大会の強化が重なったのは大きかった」と振り返る。
 高校から練習場所、練習場所から自宅への送迎、夏休みで練習が続く時は2人を自宅に泊めるなど、先輩たちはできる限りのサポートをした。西田さんは「若い子たちが育ってチームのためになるならと、僕たちは当たり前にやっていた。でも、他県からはすごく珍しがられた」と苦笑する。
 そんな県選抜の活動を通して、鳥海は日本代表スタッフの目に留まり、これが16年リオデジャネイロ・パラ出場につながった。川原も高いレベルに触れ「視野を広げるきっかけになった」。そして迎えた自国開催パラの舞台。大きく成長した2人は「古里への感謝」を胸に、世界最高峰のコートで躍動した。
 2人の“兄貴分”のような存在だった長崎サンライズの立川光樹さん(29)は“弟たち”の活躍に目を細める。「2人の地元愛がうれしいし、長崎も2人からいい刺激と感動をもらった」
 地元の障スポをきっかけに育った「宝」が、まぶしい輝きを放った11日間。長崎の車いすバスケット界にとって、最高の夏になった。


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