世帯年収約1200万円。住宅ローン2300万。子を中学受験させたいが問題ない?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、2人の子をもつ42歳、パートの女性。夫は年収950万円ほど。子どものうち1人を中学から私立に行かせたいと言いますが、住宅ローンを組んで現金預金が減っており、不安があると言います。現在の家計状況で問題ないでしょうか? FPの當舎緑氏がお答えします。

3歳と8歳の子どもがいます。

今後、2人の子どものうち1人は、学習面での不安解消を目的に、支援の手厚い私立中学に行くことを想定して家計管理をしたいと思い、相談させていただきました。今の家計状況で問題ないでしょうか?

私(42歳)はパートで年収220万円ほど、夫(38歳)は年収950万円ほどです。住宅取得で貯金が激減し、現在は預金1,100万円、投資額は250万円。住宅ローンの借入額は2,500万円で、返済期間は20年。定年までに返済するプランにしましたが、後悔はしていません。

【相談者プロフィール】

・女性、42歳、パート、既婚

・同居家族について:

夫/38歳、会社員、年収950万円ほど。

妻/官公庁パート、1年契約。年収220万円ほど。健康状態問題なし

子ども2人/3歳、8歳

・住居の形態:持ち家(マンション・千葉県)

・毎月の世帯の手取り金額:55万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:190万円

・毎月の世帯の支出の目安:44万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:14万円

・食費:6万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:2万円

・保険料:3万円

・通信費:8,000円

・車両費:1万円

・お小遣い:10万円

・その他:5万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:100万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,100万円

・現在の投資総額:250万円

・現在の負債総額(住宅ローン残債):2,300万円(物件購入額4,350万円、リフォーム400万円。借入額2,500万円、金利0.65%、返済期間20年)

その他は借り入れなし、奨学金返済済み。


當舎:相談者の言葉の中に、定年までにローンを返済するプランにして貯蓄が激減しましたが、「後悔はしていません」と書かれているのですが、実は、ファイナンシャルプランナーから見ても、「よく頑張りました」というべきいい判断です。そのおかげで、現時点で家計はとても堅実に運営されているといえるでしょう。

ただ、将来は誰にもわかりません。いまや、65歳までの雇用継続は義務となっていますが、企業へはさらに70歳への雇用努力が求められ、70歳まで働き続けられる時代にはなってきました。ただ、働き続けられたとしても、給料はそのままなのか、それとも下がるのかは企業により異なります。

このままの収入と支出が続けば、将来ももちろん安泰ですが、今後問題となるのは子どもの教育費です。日本政策金融公庫が公表している令和2年度教育費負担の実態調査によると、高校入学から大学卒業までにかける子ども一人当たりの教育費費用(入在学費用)は965.1万円。前回の調査からは26万円増加しています。あくまでも平均ですので、決めつけるのは危険ですが、高等教育にかかる費用が家計の重い負担となっているのは間違いありません。すでに健全な家計運営をされていますので、この状態が続けられるよう、今後の方法を考えていきましょう。

塾通いが始まった後の教育費計画の見直しを

今回のご相談は、子ども2人のうち、一人を中学受験させたいが可能かどうかというご相談ですが、回答としては「可能」です。子ども2人のうち、8歳の上の子どもが受験すると考えてみましょう。1年後の小学校4年生から塾通いが始まります。参考として、いくつかの塾の授業料をあげてみます。

今の教育費は月2万円ですから、今後塾に通うことで、現在できている月10万円、年間賞与から100万円の貯蓄ができなくなる、もしくは減額になることがわかります。特に、小学校6年生では、学習のための費用だけでなく、塾に通うための交通費、お弁当代、外食代など食費の上昇、受験料など、節約ができない費用が増加します。これは、受験に伴う経費ですから仕方がありません。

きょうだい別に教育費の枠を設定することが大切

現時点の家計でキャッシュフロー表を作成してみると、子どものうち一人が私立中学を受験しても、途中で家計は赤字になることは考えられませんので、安心してください。ただし、塾通いを始めたときに、貯蓄できる金額を再設定し、子ども2人それぞれの教育費にいくら使えるのか、目標を立てることが大切です。きょうだいで個別に教育費の枠を設定しておかないと、どちらかの教育費の増加がもう一方の教育費の減額に直結します。きょうだい公平というのはとても難しいことですが、できれば今のうちに、それぞれの教育費のための口座を作っておくといいでしょう。

考えられる不安要素の対抗策を考えておきたい

子ども2人のうち一人が私立受験をすることについては、「可能です。問題ありません」と前述していますが、今後考えられる不安要素についてもあげておきます。妻は、官庁のパートで年収220万円となっていますが、契約社員の場合、5年を超えると「無期雇用転換」の申し出をすることが可能です。
労働契約法

場合によっては5年を超える前に雇用契約を終了される企業もあります。妻がこのままの年収を継続できなければ、家計の安心度は下がるでしょう。

また子ども2人のうち1人を私立にすることが前提のご相談でしたが、きょうだいの場合、似たような進路になることはよくあります。上の子が私立に進学したのに、下の子が「受験をしたい」と言った時には、どうするのか、あきらめさせるのか、それとも希望を叶えるのか、ご家族でしっかりと話し合っておきたいものです。

2人とも私立中学に進学した場合の注意点

もし2人とも私立中学に進学した場合の注意点を申し上げます。年齢差は5歳です。下の子が、受験を頑張って私立中学に進学したと同時に上の子の受験生活が始まります。この時点での貯蓄はあまりできないと思ったほうがいいでしょう。

現時点の1,100万円の貯蓄と投資金額250万円の使い道を色分けしておきましょう。教育費に使う部分はいくら、老後資金とするのはいくら、住宅のリフォーム代、車の購入費などと、多額の支出が見込まれる費用の区分けをしておかないと、教育資金の負担は他の支出へのしわ寄せとなるでしょう。

今回の相談内容に、今後の児童手当や高校生の就学支援など、子どもに対する給付は加味されていません。児童手当も高校生の就学支援も、所得によって支援が受けられるかどうかが決まります。これからも情報収集は欠かさず、家計の見直しを継続するといいでしょう。

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