老後が心配「個人年金保険」で備えるはあり?受け取るときの注意点、iDeCoとNISAとの優先順位

「老後資金が心配……」と言う人は、とても多いでしょう。

実際、生命保険文化センターの調査によると、84.4%の人が「老後生活に不安」と回答をしています。その具体的な内容として、「退職金や公的年金だけでは不十分」と答えている人が82.8%もいました。

そこで、老後資金をもっと増やしたいと言うことで、個人年金保険に興味を持っている人も少なくありません。そんな個人年金保険ついて、二つの相談を受けました。

一つは、個人年金保険を検討したけど、「どの保険がいいか?」ということです。もうひとつは個人年金保険に加入しているのだけど、受け取るときの「注意点があるのか?」「公的年金に影響はあるのか?」ということです。

では、今回は、個人年金保険の「入口」と「出口」について解説をしてみたいと思います。


超低金利の時代、個人年金保険の魅力はない!

生命保険の外交員に、老後の生活の備えとして個人年金保険を勧められたけど、ホントかな?という疑問を感じて相談をする人も多いです。

ズバリ答えると、あまりオススメしません。というのは、いまは超低金利時代です。個人年金保険も運用は難しく、あまり増えないので魅力のない商品になっています。また、個人年金保険を扱っている会社も少なくなりました。

つまり、個人年金保険に契約をしても、期待したほど増えないということです。

では、実際どの程度増えるのかというと、30歳から60歳までの30年間、月額1万5,000円を積み立てると保険料の払込総額は540万円になります。60歳から5年間の据え置き期間があり65歳での受取金額は563万円。30年間で23万円増えると言うことです。戻り率でいうと104.3%です。

しかし、これを年利で考えてみると年利0.1%です。毎月1万5,000円を積立ながら0.1%で運用すると、30年後には、だいたい563万円になります。だとすると、つみたてNISAの平均運用利回りは2〜3%です。手数料の安い投資信託などを使って運用した方が効率いいでしょう。

また、個人年金保険は固定金利なので、最初にスタートした金利は最後まで変わりません。30年間、ずっと超低金利の時代が続くのか?というと、それはわかりません。するともし、金利が上昇すれば、損になってしまいます。

超低金利なので、これ以上、金利は下がりにくいのですが、上がる可能性はあります。

ただ、個人年金保険には、生命保険料控除がありますので税金が少しだけ優遇されます。

とはいっても、iDeCoの方が税制優遇が大きいので有利になります。またNISAやつみたてNISAも税制優遇はあります。iDeCoやNISAの方は、投資信託などで運用するので、効率よく増やすことができます。

「外貨建て」「変額保険」よりもiDeCo、NISAを利用した方がいい!

個人年金保険で、円建てではなく「外貨建て」「変額保険」というのがあります。

外貨建て保険は、円よりも利率がよくなりますが、為替によって大きく影響を受けます。受け取る時に円高で増えればいいのですが、円安になっていると払い込んだ保険料の総額よりも少なくなる可能性もあります。

「変額保険」というのも、株式や債券などの投資信託で運用をします。保険の機能もあるので、全額は運用に回りません。

さらに手数料も余計にかかってしまいます。ということは、NISAなどで運用をする方が、税制優遇もあって効率がいいということになります。

ですので、老後資金を準備したいと考えるなら、税制優遇がもっとも大きい「iDeCo」、その次に検討したいのが「つみたてNISA」。それぞれの限度額いっぱいまで利用した次に、検討するのが「個人年金保険」の順番でしょう。

個人年金保険と税金の関係

それでは、次に現在個人年金保険に加入していてもうすぐ満期という人は、どうなのでしょうか?

たぶん、もう10年、20年、30年前に契約をしている人だと思います。とくに30年以上前に加入した人は、予定利率もよかったので、大きく増えていると思います。さらに受取りの条件もよい場合があります。

じつは、私も個人年金保険に契約をしていました。予定利率は3.75%です。いわゆるお宝保険ですね。受取の条件は、一時金または終身年金です。私の場合は、迷わず終身年金にしました。

いまは長寿の確率が高いですし、終身で年金を受け取れるというのは安心感があります。

しかし、受取の税金のことが心配になる人もいるでしょう。たしかに保険金を受け取ると税金がかかります(ちなみに死亡保険金とか入院給付金には税金はかかりません)。

個人年金保険の毎年受け取る年金は、雑所得として所得税・住民税の対象となります。

雑所得の計算は次のとおりです。

総収入(年金額)−必要経費(払込保険料の年金額に対応する金額)=雑所得

この必要経費の計算は、とてもややこしいので省略します。基本は保険会社で計算した案内が届きます。また、一括で受け取った場合には、一時所得として所得税・住民税の課税対象となります。

ところが、年金の契約者が夫で被保険者と年金の受取人だった場合は、雑所得ではなく、贈与税になります。税金の計算がちょっと変わってきますので、注意してください。

また、年金の受取人が受け取っている途中で死亡した場合、その契約者、被保険者、受取人の契約の仕方で、相続税だったり、贈与税、雑所得になったりします。

一括で受け取った場合も同じで、相続税、贈与税、一時所得となります。

ちなみに、まだ20年未満の契約で、予定利率が低い個人年金保険の場合は、増えている金額も少ないので、課税される金額も少なくなります。あまり気にしなくてもいいかも知れません。

個人年金保険の賢い受け取り方とは

公的年金に影響があるのかという心配をしている人がいますが、公的年金と個人年金保険とは、まったく関係がありません。

ただ年金で受け取るので、毎年の所得が増えますから、所得税、住民税には関係してきます。また、同じ意味で社会保険料に影響することもあります。

個人年金保険の受け取り方には、一括受取り、年金受取り(有期型・終身型)があります。それぞれの保険会社によって契約内容が異なりますが、選べる場合もあります。もし、選ぶことができるのならば、健康状態にもよりますが、元気ならば終身年金で受け取る方が、長寿時代にあっているというのが私の考えです。

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