「外国人目線」で生活情報発信 11言語対応サイト開設 長崎のNPO法人

スマホで閲覧しやすい多言語ポータルサイトを開設した松尾理事長=長崎市内

 長崎市を拠点に在日外国人の支援に取り組むNPO法人「Treasures of The Planet」(松尾佳美理事長)は今夏から、ライフラインや医療、防災、財政支援など日本の生活情報について、11の言語で紹介するポータルサイトを運営している。自治体や民間団体の情報を翻訳して載せるほか、各団体の外国語対応サイトにつながるリンクも掲載。市内外の外国人に困り事などを聞いた事前アンケートを基に、「外国人目線」の情報発信を心掛けている。

■悩みや孤独感 

 サイト名は「UNIVERSALAID.JP」。サイト内の情報は日、英、中、韓、ベトナム、ネパール、インドネシア、タガログ、タイ、マレーシア、スペイン-の11言語に対応する。税や保険制度、ごみの出し方、水道や電気などの公共料金といった基礎的な生活情報に加え、新型コロナワクチンの接種方法や災害への備えなどの情報も盛り込んだ。メールや電話で相談も受け付ける。
 「Treasures-」は、米国で20年以上の生活経験がある松尾さんが2014年に設立。帰国して長崎市に帰郷後、勤務先の長崎大熱帯医学研究所などで知り合った外国人から生活の悩みや孤独感などを聞き、支援を始めた。ホームパーティーに招いて交流したり、市役所での手続きをサポートしたり。東南アジアのラオスで交通安全教育や農業支援なども続けている。

■スマホで入手 

 松尾さんは活動を続ける中で、昨年からのコロナ禍で在日外国人の悩みが深刻化している現状を知った。そこで大半の外国人が持つスマートフォンで、必要な生活情報を母国語で入手できるウェブサイトの設立を発案。民間の助成金も活用し準備を進めた。
 開設に向け、松尾さんは「日本人向けの情報をただ翻訳するのでなく、外国人の視点で、外国人が何に困っているか知る必要があった」と振り返る。実態を探ろうと今年1~3月、市内外に住む外国人約360人にアンケートを実施。調査には同大大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科の学生らの協力も得て、生活不安や影響を尋ねた。

■コロナで不安 

 コロナ禍で「母国語で入手したい情報」(複数選択可)については、全体の6割が「感染した時の症状」を挙げ、半数近くは「感染時の対処」や「受診できる病院」、「経済支援」などを選択。またコロナ禍前と比べ、約4割が「友人や近所との付き合いが減った」「家計が不安定になった」と答えた。サイトには、こうした不安に応じて情報を掲載し、今年8月に本格運営を始めた。
 サイト開設後もメールなどで「ワクチンの申し込みをしたが、いつ受けられるか分からない」「日本語を勉強したい」「アルバイトの出勤数が減った」などの相談が寄せられているという。
 松尾さんは「今後も相談や要望内容に応じて情報を追加し、将来的には長崎だけでなく、日本全国の外国人が使いやすい形にしたい」とこれからの情報発信を展望している。

「UNIVERSALAID.JP」のサイト画面。英語や中国語、スペイン語など11の言語に対応している。画面はベトナム語

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