韓国紙「TPP加盟を韓国農業界は大きく憂慮」 途上国「特権」剥がされ国産脅威に

日本などが主導するCPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に中国と台湾が参加表明をしたなか、韓国でも加盟の是非が議論されているが、これに農業団体は強く反対している。

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韓国政府は先月27日、ホン・ナムギ経済副首相が経済長官会議を開き、CPTPP加盟のための衛生・検疫や水産補助金、デジタル貿易などの制度整備案を用意していると発表しており、前向きな姿勢をみせた。

朴槿恵政権時代にも加盟が検討されたが、日本が主導し、後発の韓国には実益がないと判断され見送られた。しかし最近になり、世界の二大市場である中国と米国が加盟(復帰)する可能性が生じたことで、「船に乗り遅れるな」とばかり、加盟に再び傾斜しているようだ。

しかし、自由貿易の拡大は輸出産業には良くとも、農家などには脅威になり得る。

韓国の農民新聞は1日、韓国のCPTPPの加盟について、「農業界では大きく憂慮している」とし、メガFTA(自由貿易協定)である CPTPPは、「これまで韓国が経験しなかった新たな通商ルールが含まれる」ことが、その理由だという。

同紙は、「《区画化》の概念と幅広い原産地認定が代表的」な例であるとし、「輸出国が、国全体としてではなく、一介の農場・屠畜場が衛生・検疫要件を整えるだけで、韓国にいくらでも輸出することができる」と説明し、輸入農産物が増えることへの危惧を示した。

全国農民会総連盟は9月28日の声明で、「衛生・検疫などの制度整備案を見ると、国民の健康権と検疫主権を放棄し、輸出国のニーズを聞いであげる方式に切り替えるということ」だとし、「CPTPP加盟推進を直ちに中断しろ」と要求した。

既に日韓中が加盟したRCEP(地域的包括的経済連携協定)についても否定的な声が出ていると同紙は指摘。チェ・ボムジン韓国農業経営人中央連合会政策調整室長は「政府はRCEPが国際貿易秩序を変えるほどの通商ルールを含んでいないと言うが、東南アジア産トロピカルフルーツの低価格攻勢による国産(韓国産)農産物の消費不振など2次被害など、広範囲に考慮しなければならない」と述べていると伝えた。

韓国は最近、RCEP加盟に加え、WTO(世界貿易機関)やUNCTAD(国連貿易開発機構)における途上国資格も返上しており、これまで韓国産農産物を守ってきた「特権」が次々に剝がされていることから、韓国の農家では危機感が高まっている。

韓国農業新聞は、CPTPP加盟議論が再燃し始めた今年7月、「文在寅政権がRCEP、CPTPP、UNCTADなどで先進国グループに認定されることは、実益ではなく、来年の大統領選挙を控えて業績を積むためのものではないかという批判の声も出ている」と伝えた。

その上で、「世界ではコロナで食料価格が上昇し続けており、自国の食料安全保障を守るのに余念がない」とする一方、「韓国は食糧より携帯電話、自動車の輸出をより重要に考えているのではないかと懸念される」と指摘している。

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