「離島の観光振興 方策を」「幼保無償化 全世帯に」…衆院選公示 長崎県内有権者の声

新型コロナウイルス感染対策のため、候補者(左)と支持者は握手の代わりに、こぶしを突き合わせていた=長崎市内

 衆院選が19日公示された。新型コロナウイルス禍で迎える初の国政選挙に長崎県民はどのような政策に注目し、論戦に期待するのか。県内の有権者に「候補者に言いたいこと」を聞いた。
 対馬市の観光業は韓国人客が途絶え、苦境に陥っている。宿泊施設を経営する上対馬町の男性(63)は「稼働率は1割にも満たない」と厳しい状況を吐露。国内観光客の誘致に活路を見いだす上で「いい方策がないか政治家と一緒に考えたい」と望む。
 コロナ禍は、松浦市鷹島町で盛んなトラフグ養殖にも深刻な影響を与えている。出荷先の大都市圏で飲食店の営業が制限され、需要減少や価格低迷に苦しむ。餌代などコスト増が経営を圧迫しており、町内で従事する坂元高幸さん(49)は「第1次産業を手厚く支援すると明確に打ち出し、行動で示してほしい」と訴える。
 諫早市仲沖町の元看護師で主婦の東聖美さん(25)が注目するのは少子化対策だ。長女はまだ生後1カ月。手が掛かるうちはパート勤務で働きたいと考える。ただ幼児教育・保育の無償化で0~2歳児は所得の低い住民税非課税世帯だけが対象。東さんは保育料が毎月4万~5万円かかり、パートの収入もほとんど残らないため「全世帯で適用してほしい」と求める。
 幼保無償化を含む社会保障財源に充てる消費税を巡っては、コロナ禍で苦しむ家計の支援策として、時限的な減税の是非が争点となる。西彼長与町丸田郷の主婦、川崎英子さん(70)は「減税してほしいのが本音」と率直に語る。
 若者の県外流出をいかに抑えるかも大きな課題。佐世保市中通町の個人事業主、竹本拓史さん(23)は「地方は人との深い関係性を築けるのが魅力。若者を地方に定着させるため、起業など挑戦を後押ししてくれるような経済支援を」と期待する。
 環境問題に関心があるという長崎大環境科学部4年の筬島(おさじま)葵さん(22)。「これだけ気候変動の問題が世界的に叫ばれても、日本は動いていないように映る。今の政治は解決に向けた具体的なプロセスが見えてこない」と不満を語る。「大規模災害が相次ぐ中、スピード感を持って対応しないと怖い」
 大村市寿古町の福祉施設職員、愛合一智さん(43)は各党がコロナ対策として現金給付策を掲げる状況に「似たような主張で、どこに力を入れて財源を分配するか見えにくい」との印象を抱く。12日間の短い選挙戦となるが「耳障りの良い言葉ばかりではなく、どのような危機が待ち受け、変革が必要か、厳しい部分も含め発信してほしい」と期待を込めた。

© 株式会社長崎新聞社