衆院選神奈川・コロナ禍の現場から【観光・飲食】消費促す活性化策を

「協力金がなければ店は終わっていた」と語る焼き鳥店の男性店主=横須賀市内

 10月中旬の週末、鎌倉駅近くの小町通りは親子連れや若者グループでにぎわいを見せていた。

 千葉県船橋市から友人とともに訪れた保育士の女性(23)は「緊急事態宣言中は職場でも行動が制限されていたが、やっと解除され、ワクチンも打ったので江の島と鎌倉に遊びに来た。SNS(会員制交流サイト)で見たしらす丼も食べて大満足」と声を弾ませた。

 例年は2千万人が訪れる国際観光都市の鎌倉にも、1年半以上続く新型コロナウイルスの影響が直撃している。昨年の入り込み観光客数は1963年の統計開始以来最少の738万人まで落ち込んだ。

◆戻らない 客も生活も

 鎌倉小町商店会会長の今雅史さん(73)は「飲食などは5割減、ほかの業種は3割減程度のところもあるが協力金がないので苦しい」とこぼす。

 宣言解除後は客足が回復しつつあるが、コロナ禍で変化を感じるのが客層だ。以前は多く見られた高齢者の姿が減り、収益の3割前後を占めていたインバウンド(訪日客)の回復も見込めない。

 来年は鎌倉を舞台とするNHK大河ドラマの放送が予定されており、観光振興のチャンスとみて集客策を練っているが、今さんは「ワクチン接種が進んでも感染への不安は根強い。観光客が元通りになるには時間がかかる」と見る。

 影響の長期化を見据え、政府には効果的な経済活性化策を望む。「給付金では貯金にも回ってしまう。期限や地域を限定して消費を促し、現実的に地域にお金が回る活性化策をお願いしたい」

◆注文が弁当1個の日も

 「9月が一番きつかった」。横須賀市内で焼き鳥店を一人で営む男性(56)は苦渋の表情で振り返る。

 延べ床面積33平方メートルにカウンターとテーブル2台。もともと20席足らずの小さな店だが、感染予防策を講じて15席まで減らした。昨年11月からは配達弁当も始めたが、1日15個が限度。ことし7月に酒の提供が制限されると客足はますます遠のき、注文が弁当1個のみだった日もある。

 男性は9月から特別養護老人ホームでアルバイトを始めた。週2回午前中に25人ずつ入浴介護をこなし、夕方から焼き鳥を焼く。

 しかしアルバイト代を加えても収入はコロナ前から半減し、家賃や光熱費、冷蔵庫のレンタル代などを引くと、手元に3万円しか残らなかった。直後に協力金が振り込まれて胸をなで下ろしたが、「協力金がなかったら店は完全に終わっていた」と話す。

 宣言解除後は、常連客が少しずつ戻り、25日には営業時間の短縮や酒類提供制限も全面解除された。

 だがコロナ禍で客も自分も生活スタイルが変化し、かつてのように深夜まで店を開ける生活には戻らないと感じている。「協力金のおかげで店は維持できたが、以前のような生活にはならない。これからどうなっていくのか」と不安をのぞかせた。

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