「相模原市長の本村賢太郎です。私と彼は同級生。今回は彼の出番です」
24日、相模原市緑区のJR橋本駅前。応援弁士として本村がマイクを握る横で、立憲民主党の新人・長友は深々を頭を下げた。
長友と本村はかつて14区を地盤とした元財務相・藤井裕久の秘書を務めた。本村は藤井の後を受け、2009年から14区で4度出馬。17年の前回選で希望の党(当時)で比例復活した本村が19年に市長に当選したことを受け、長友は後継として国政初挑戦となった。
陣営幹部は「藤井、本村とつないだたすきを途切れさせるわけにはいかない」と強調する。
共産党が擁立を見送り、与野党一騎打ちの構図が出来上がったことも陣営は追い風と捉える。地元市議が「コロナ禍で自公政権に不満を持った市民は少なくない。その受け皿となり得るか否か」と話せば、14区を担当する共産幹部も「政策や考え方の違いはあるけれど自公に勝ちたいという思いは同じだ」と語る。
公示直前の決起集会。長友は、沖縄前知事の翁長雄志が保守と革新を結集させるため唱えていた「腹八分、腹六分の精神」を引き合いに出した。「思いや考え方は違うが基本的に目指す方向性が同じであるならば、腹八分、腹六分の精神でまとまり、いまの政治を変えていく。それが14区ではできる」と、野党共闘による一本化に期待を寄せる。
ただ、市議2期、県議4期を務めたとはいえ、「知名度は相手に比べて圧倒的に劣る」と陣営幹部は不安材料を口にする。主要駅に立ったり、商店街を回ったりと表に出るが、地元市議は「勝利するには、まだまだ足りない。一人でも多くの有権者に顔と名前を覚えてもらわないと」と焦りをにじませる。
一方、5選を目指す自民党の前職・赤間は自公政権の継続を訴える。19日の告示日。同市中央区の事務所前で行われた「第一声」には自公の県議、市議が集結し「小選挙区は赤間、比例は公明党」と自公連立を強調した。
地元市議は「一騎打ちは脅威。分かりやすい構図ゆえ、安倍、菅政権に不満を持つ人々の票が集まる可能性がある」と警戒する。岸田政権の支持率が高くなかったこともあり、ある県議は「森友・加計学園問題など政府が説明責任を果たしていない、という考えは有権者に根強く残っている」と話す。
油断は大敵─。陣営はそう繰り返し、引き締めを図る。告示から初の週末となった23日には同市緑区のJR橋本駅前で赤間が所属する派閥を率いる党副総裁で元首相の麻生太郞が応援に駆け付け、選挙戦終盤にも有力弁士が選挙区入りする予定だ。
陣営は「厳しい選挙戦」と口にするが、直近3回で小選挙区での当選を死守してきた自負もある。コロナ禍でも地元に密着した活動を続け、幹部の一人は「14区は赤間というイメージが根付いている」と話す。
赤間は言う。「相手が誰になろうと、構図がどうなろうとやることは変わらない。自公政権の実績や経験、安定した政治の必要性を訴えていく」
=敬称略