30代で世帯年収1700万円、資産4000万円超。恵まれた家計に潜む落とし穴とは

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、38歳、会社員の女性。34歳の夫と共働きで、年収は1,700万円以上、資産は4,000万円超と、高収入。子どもが小学生に上がった頃に相談者が転職を考えており年収が大幅に下がると予測していますが、家計の先行きはどうなるのでしょうか。FPの氏家祥美氏がお答えします。


現在目的もなく貯金・投資しています。順調に増えていますが、目標金額や具体的な目的がないため、どこまで貯めればいいのかわからず闇雲になり不安になっています。

現状は共働きですが、子どもが小学生になる頃に一度私が退職を考えており、転職後は収入がかなり下がると思います。主人も年俸制なので昇給の保証はなく年収が上下します。いつか住宅は購入したいと思っていますが、投資分から崩すのがいいのかわかりません。よろしくお願いします。

・女性、38歳、会社員(年収730万円)

夫、34歳、会社員(年収1,000万)

子ども、5歳

・住居の形態:賃貸(神奈川県。現在は社宅ですが基本転勤はありません)

・毎月の世帯の手取り金額:100万円

・ボーナスの有無:なし

・毎月の世帯の支出の目安:40万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:5万5,000円

・食費:8万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:2万5,000円

・保険料:5万円

・通信費:1万円

・車両費:1万円

・お小遣い:10万円

・その他:5万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:35万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,740万円

・現在の投資総額:2,390万円

・現在の負債総額:なし

・退職金:なし

共働きをしながら子育て真っ最中のご相談者さんの家計は、毎月の手取り収入が100万円、支出が40万円。かなりの貯蓄体質で、貯蓄はどんどん増えていきます。しかし、お子さんは5歳とまだ小さく、忙しく働き続けることに意味を見出せなくなったのか、ご相談者さんは転職を検討しています。本当に今の会社を辞めて大丈夫なのか、気になる点を順番に考えていきましょう。

4つの「ない」に要注意。家計に潜む落とし穴

【その1】ボーナスがない
世帯の手取り月収は100万円と、30代夫婦としてはかなりの高給。しかも毎月の支出は40万円と、収入に対して支出はコンパクトに抑えられています。しかし、ボーナスがないため、ボーナスからの貯蓄はゼロ円。しかも、家具家電の買い替えや、家族旅行代など、さまざまな大きな支出についてもボーナスに頼ることができません。

そのため、家計の内訳をよく見ると、毎月の貯蓄は35万円となっていて、残った25万円が使途不明になっています。

収入100万円
→支出40万円・貯蓄35万円・不明25万円
→年間貯蓄420万円

【その2】教育費がかかっていない
お子さんは現在5歳です。教育費無償化の年代ですから、保育園代等がほとんどかかっていない状況ですが、お子さんが小学校高学年になる頃からは、塾代などの教育費負担が増していくでしょう。

通常、塾代や高校までの授業料はその時々の家計から出していきますが、大学の授業料に関してはあらかじめ積み立て等で準備していきます。お子さんが高校生3年生の夏くらいまでに500万円を用意しておけると、私立の文系理系どちらに進学する場合も対応しやすくなります。貯蓄のうち、500万円を将来の教育資金として確保しておきましょう。

【その3】住宅を購入していない
将来的にマイホームの購入を検討中というものの、現在は社宅に住んでいます。社宅の家賃は5万5,000円ということで、これも毎月の支出を抑えられる大きな要因となっています。マイホームを購入する際には、金融資産を取り崩して頭金を支払うことになります。

仮に5,000万円物件を頭金2,000万円で購入すると仮定するとします。3,000万円を金利1%で30年ローンを組んだ場合、毎月の返済額は9万6,491円となります。マンションの場合には管理費や修繕積立金がかかるため、月々の住居費は12万円程度になると想定できます。

【その4】退職金がない
ご主人の会社は年俸制を取っているため退職金がありません。日本経済団体連合会・東京経営者協会が行った「2018年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」によると「管理・事務・技術労働者(総合職)」の60歳の退職金の平均額は、大学卒で2255.8万円です。

退職金がある会社の場合、現役時の給与の一部が退職金として後払いされていることになります。退職金がない場合は、退職金分も先にもらっていると考えて、退職金相当を老後資金として確保しておくとよいでしょう。

金融資産を目的別に色分けを

現在お持ちの金融資産は、貯金が1,740万円、投資が2,390万円で、合計4,130万円です。共働きをしながらご夫婦とも30代でよく頑張っている金額ですが、例えば先ほどの4つの「ない」に注目して、目的別にお金を色分けをしてみましょう。

子どもの大学資金として500万円、マンションの頭金とし2,000万円、退職金相当額2,000万円と考えてみると、それほど余裕があるわけではないことに気づくのではないでしょうか。

大学資金 500万円
マンション頭金 2,000万円
退職金相当 2,000万円

合計で4,500万円になります。すでに4,000万円があることで、人生の3大資金(教育・住居・老後)に基本的なめどが立つものの、まだ十分ではありません。さらに、これからマイホームを購入する場合、先ほどは30年ローンで試算しているため、退職後も住宅ローン返済が続くことになりますから、将来的には繰り上げ返済資金も貯めていく必要があります。老後資金もまだ退職金相当しかないため、急ぐ必要はありませんが積み増していきましょう。

なお、マイホーム購入資金として投資を取り崩すか、というご質問ですが、現在のご資産の内訳からみると、預貯金を教育費と住居費に、投資を老後資金に割り当てるように配分してもよさそうです。ただし、住宅購入のタイミングや物件価格、相場環境、その時の資産状況によっても変わってきます。

子どもの成長による支出増を予測

現在、毎月の支出は40万円ということですが、将来的に暮らしが変わると毎月の支出も増えていきます。例えば、マイホームを購入して月々の住居費が12万円になったとすると、住居費だけでも6万5,000円の支出が増えます。お子さんが小学生になって塾や習い事の数が増えたら、教育費負担も増していきます。仮に教育費が月額5万円になったとしたら、教育費でも2万5,000円の支出が増えます。子どもが携帯を持ち、お小遣いをもらい、電車やバスで移動をするようになったら、その他でも1万円くらいは支出が増えそうです。今ざっと計算しただけでも、住居費6万5,000円+教育費2万5,000円+その他1万円=10万円の支出が今よりも増える計算になります。

現在、毎月の支出が40万円ですから、10万円増えたら毎月50万円の支出になります。この辺りの金額を軸にして、今後の家計を考えてみてはいかがでしょうか。

25万円の使途不明金と転職先の給与がカギ

今後の家計が成り立つかどうかには2つのポイントがあります。1つは現在行方不明になっている毎月の25万円です。月収100万円のうち、支出が仮に10万円増えて50万円になっても、使途不明金がなければ、現在の貯蓄35万円は維持できます。お金の行く末を家計簿アプリなどで細かくチェックして、なるべく使途不明金がなくなるようにしてください。

続いて、カギを握るのがご相談者さんの転職です。年収がどの程度減りそうなのか、その転職はいつなのか、転職によって暮らしがどんなふうに変わるのかを考えてみましょう。

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