【日本S】最速130キロ台の41歳石川がオリ打線封じたワケ 燕OB「打者が戸惑うのも無理はない」

ヤクルト・石川雅規【写真:荒川祐史】

オリ打線相手に6回3安打1失点、日本Sの歴代セ・リーグ最年長勝利投手に

■ヤクルト 2ー1 オリックス(日本シリーズ・24日・東京ドーム)

ヤクルトの石川雅規投手は24日、東京ドームでのオリックスとの「SMBC日本シリーズ2021」第4戦で6回3安打1失点(自責点0)の好投を見せ、41歳10か月で日本シリーズの歴代セ・リーグ最年長勝利投手となった。チームは2-1で競り勝って対戦成績を3勝1敗とし、20年ぶりの日本一へ王手。身長167センチの小兵で、速球は130キロ台が精いっぱいの大ベテランが、強力オリックス打線を封じ込めることができたのはなぜか。

パワフルな相手打線を向こうに回し、熟練の技が冴えた。初回1死から宗に左前打を許すも、吉田正を得意のシンカーで空振り三振に。4番・杉本も同じくシンカーで中飛に仕留めた。2回には先頭のT-岡田を四球で歩かせたが、続く安達を内角低めに食い込むカットボールで詰まらせ、遊ゴロ併殺で事なきを得た。3回からの3イニングは3人ずつで片づけ、味方のエラー絡みで1点を許した6回限り77球でマウンドを降りたが、試合の流れはつかんで離さなかった。

プロ20年目・41歳のベテラン左腕のどこがそれほど打ちにくいのだろうか。現役時代に4球団で計21年間捕手として活躍し、2018年にはヤクルトの1軍バッテリーコーチとして石川とともに戦った野口寿浩氏は「第一に、これほどの軟投派左腕がパ・リーグにはいないこと。第二に、これこそ石川の最大の特長ですが、手元に来るまで球種を判別しづらいことです」と指摘する。

石川の特長は「ストレートで決めにいく時でさえ、力むことはない」

石川の球種は、スライダーとシンカーが球速120キロ前後。直球、カットボール、シュートが130キロ前後だ。「打者にしてみれば、同じ球速のボールが、逃げていくのか、食い込んでくるのか、はたまた真っすぐ来るのか、ギリギリまでわからないのです」。さらに時折100キロ前後のカーブまで混ぜる。

「ストレートで決めにいく時でさえ、力むことはないので、投球フォームからも球種は判別できない。制球さえ良ければ、普段見慣れていない打者が戸惑うのも無理はありません」と野口氏は言う。

プロ1年目の2002年から、大卒では史上最長となる20年連続勝利を継続中の石川。今季は4勝5敗、防御率3.07で、最長でも6回までしか投げたことがなく、最多投球数も96球止まりだった。それでも日本シリーズの大舞台で、最大限の投球を演じた。相手のオリックス先発・山崎颯は身長190センチの長身で、“身長23センチ差対決”も制した。

2015年に出場したソフトバンクとの日本シリーズでは2度先発して2敗を喫していたが、6年ぶりのチャンスをモノにしてシリーズ初勝利。チームにとっても値千金の白星となった。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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