税制優遇の恩恵を受けてお金を増やす!iDeCo、つみたてNISAの使い方、自分に合ったものは?

昨年から今年にかけて新型コロナウイルスが世界中で感染拡大し、将来に対して不安を抱いた人も多かったのではないでしょうか。そんな中、将来への備えとして多くの人が選択したのが「投資」。投資といってもさまざまな種類がありますが、一般の人が中長期的に安定的にお金を増やすためにぜひ利用したいのが「iDeCo」と「つみたてNISA 」です。今回は、iDeCoとつみたてNISAの使い方について改めて紹介します。


節税しながら将来の自分年金を準備できる「iDeCo」

iDeCoは、個人型確定拠出年金の愛称で、ざっくりいうと、公的年金の上乗せ制度です。iDeCoは、老後の自分年金作りの手段として注目を浴びていますが、こんなにも注目されるワケは、ズバリ他の制度よりもずば抜けて「税制優遇」があるからです。iDeCoは、「掛金の拠出時」「運用中」「受け取り時」の3つの場面で税制優遇があります。

まず、iDeCoの掛け金は、全額を所得控除できます。「所得控除」とは、本人や家族の状況、災害や病気といった個人の事情によって、税の負担を軽くする制度のこと。掛金全額が所得控除にカウントできることにより、所得税を計算する元となる課税所得が減るので、所得税を減らすことができます。ちなみに、翌年支払う住民税も減らすことができます。

また、iDeCoでは毎月、定期預金や投資信託などを積み立てていきますが、積立期間中は運用益は非課税になります。通常、定期預金の利息や投資信託の売却益や分配金には、20.315%の税金がかかりますが、iDeCoを活用すれば、これらの利益に税金がかかりません。利益に対して非課税ということは、それだけ多くのお金を運用に回すことができるので、利息が利息を生む複利効果も期待できるというわけです。

さらに、iDeCoは原則60歳から受け取りますが、受け取り時にも「退職所得控除」や「公的年金等控除」といった退職金や公的年金を受け取る時と同様の税制優遇が適用になり、お得に年金を受け取ることができます。

しかも、2017年1月からは、専業主婦(夫)や公務員、さらに勤め先に企業型確定拠出年金がある会社員も加入できるようになり、実質的には、20歳以上の日本国民であれば、ほぼ誰でもiDeCoに加入できるようになっています。

運用益をゼロにすることができる「つみたてNISA」

iDeCoは、税制優遇のメリットを享受しながら自分年金を準備できる優れた制度なのですが、不便な点もあります。それは、iDeCoで積み立てたお金は基本的に60歳まで引き出すことができないところや家計の状況が変化して、積立をストップしたり、掛け金を変更したりする時に手続が面倒だったり、手数料がかかったりするところです。

そこで、iDeCoと併用して活用したいのが、「つみたてNISA」です。なぜなら、、iDeCoとは違い、つみたてNISAは、いつでも自由に売買でき、加えて、家計の状況に応じて、簡単に積立をストップしたり、掛け金を変更したりすることもできるからです。

つみたてNISAは、投資できる上限額は、年間40万円まで。非課税適用期間は、最長20年です。新規に投資できる期間は、法改正後2042年までとなるので、2021年から投資する場合、最長で2042年までの22年間、最大880万円の投資に対する利益が非課税にできます。

これを毎年3%で運用できたとしたら、20年後の利益は、約292万円になる計算です。非課税のつみたてNISA口座なら、292万円がまるまる手に入りますが、通常の課税口座の場合、292万円に対して、20.315%が課税され、約59万円が差し引かれてしまいます。運用益が非課税になる効果は大きいですね。

また、つみたてNISAでは、一括投資は認められておらず、積立投資のみ認められています。投資できる金融商品は、個人が中長期的に安定的に資産形成できると国が判断した投資信託、ETFになっています。もちろん、基準を満たした金融商品がすべて値上がりするとは限りません。しかし、明らかに初心者に不向きなものや積み立て投資に適さないものは除かれるので、投資先を選びやすくなります。

iDeCo とつみたてNISAどっちがお得?

「iDeCo」も「つみたてNISA」も税制面でとっても大きなメリットがあることは理解してもらえたと思います。そうなると、「結局どちらがお得なの?」と思う人も多いことでしょう。

そこで、2つの税制優遇を比較してみましょう。

投資時
iDeCoは掛金の全額が所得控除の対象になり、所得税と住民税が軽減されます。

仮に所得税10%、住民税10%の人が、毎月2万円(年間24万円)を投資したケースで比較してみます。

「iDeCo」を利用した場合、1年間に4万8,000円(24万円×20%(所得税10%、住民税10%))税金を節税することができます。

一方、「つみたてNISA」は、拠出した額に対する所得控除が一切ありません。つみたてNISAを利用した場合では、この4万8,000円の税金は支払わなければならないため、その分だけ「iDeCo」よりも損をしているといえます。

運用時
運用時については、「iDeCo」も「つみたてNISA」も運用益に対しては非課税になるのでメリットは同じです。

受取時
「iDeCo」は、受取時にも「税制優遇措置」があります。一時金として受け取る場合は「退職所得控除」が、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」という大きな控除が受けられることから税負担が少なくなります。

一方、「つみたてNISA」の場合も収益に対して非課税になるので、メリットしては、ほぼ同じといえるでしょう。

非課税枠
「iDeCo」の拠出額は、個人事業主やフリーランスの方であれば、年間81万6,000円です。つまり、年間81万6,000円を30年間拠出したとすると、投資の元本部分だけで総額2,448万円になります。企業年金がない会社員の方の場合、年額27万6,000円です。30年間では828万円です。「iDeCo」は、属性により非課税投資総額の金額は異なります。

一方、つみたてNISAの投資上限金額は年間40万円、非課税投資総額は2021年から始めれば880万円です。

「税制優遇措置」で比較する限り、「iDeCo」の方がメリットが大きいと言えますね。

では、iDeCoで決まりかというと、先ほどもお話したように、つみたてNISAは、iDeCoと違い、お金が必要になった時や利益を確保したいときに簡単に現金化できるというメリットがあります。また、iDeCoの最低投資金額は5,000円からですが、つみたてNISAは100円から始めることができます。

こうして比較すると、老後資金にフォーカスして準備したい、より節税を重視するなら「iDeCo」がおすすめです。なんといっても所得控除という強い武器があるからです。

一方、少額から投資を経験してみたい、流動性を重視するなら「つみたてNISA」が適しています。資金が必要な時に現金化できるからです。

それぞれの特徴を理解して自分に合った制度を選びましょう。

どちらかを選ぶのではなく、どちらも選ぶという選択も!

もちろん、「iDeCo」、「つみたてNISA」どちらかを選ぶというのではなく、賢く2つの制度を併用して運用するという選択をするのも良いでしょう。

若い世代の方は、ライフプランが変化する時期なので、まずは、お金が必要になったらいつでも引き出すことができるつみたてNISAを優先し、その後、老後の資金準備のためにiDeCoを始めるという順番が良いでしょう。

もちろん、節税効果が高いiDeCoからスタートしてその次につみたてNISAという順番もありです。このケースでは、iDeCoの節税分をつみたてNISAに入れ続けていけば、どんどん複利で増やせて、しかも元手はずっとゼロです。

仮に月に2万円をiDeCoに拠出した場合、年間で24万円。税率が20%(所得税、住民税)とすると、毎年4万8,000円が節税になります。これを毎年つみたてNISAで投資をしていくとすると、20年間の総資産額は96万円。これがもし、3%で複利運用できたとすると、20年後は、約131万円になります。

投資元本は合計4万8,000円×20年間で96万円ですが、節税分で投資をしているので実質持ち出しはゼロです。

このように「iDeCo」や「つみたてNISA」を利用すれば、税制優遇の恩恵を受けながらおトクにお金を増やすことができます。今回は、「ふるさと納税」については触れませんでしたが、ふるさと納税も賢くお金を貯めるためにはぜひ活用したい制度です。

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本書は、税制優遇の三つの制度「ふるさと納税」「個人型確定拠出年金」「NISA」の使い方をキチンとわかりやすくまとめた実用書です。読者対象は30代前後のOL。事例を多用し、税制優遇を活用した場合のメリットを具体的な数字で示しています。節税効果を高めることで、無理なく資産運用する方法を教えます。「お金は増やしたい、でもソンもしたくない」という人にピッタリの書。本書はiDeCoの制度改正に対応した最新改訂版です。

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