2022年 長崎県内政局

2022年の県内選挙

 2月の知事選は4選を狙う現職と新人2人が出馬を表明した。夏の参院選は与野党対決になる見通しだ。松浦、南島原、東彼川棚、波佐見の4市町長が改選を迎え、松浦、南島原両市は市議選と同日選になる。郷土の行く末を左右する政局を紹介する。

◎知事選 現新3人が出馬を表明

 任期満了に伴う2月の知事選には、現職と新人2人の計3人が立候補を予定している。いずれも表明が昨年12月下旬と遅かったため選挙態勢の構築を急ぐ。
 2010年に初当選し、4期目を目指す中村法道氏(71)は南島原市出身。今回は「出馬が県政にとってより良い選択なのか自問自答を繰り返した」という。
 県政はハウステンボス(佐世保市)へのカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致や、反対住民の理解を得られていない石木ダム建設など「道半ば」の重要課題が山積。県農政連盟など諸団体から、引き続き解決に全力を尽くすよう求められ、「改めて初心に立ち返り、具体的な成果を県民に返すことが私の責務と考えた」としている。
 一方、多選や高齢への批判も予想される。出馬会見では「しっかり心に刻みたい。課題に真正面から向き合う心構えはできている」と述べた。
 元厚生労働省医系技官の大石賢吾氏(39)は五島市出身。県立長崎北高時代はラグビー部に所属し、全国高校ラグビー大会への出場経験もある。出馬会見で「ラグビーはいろんなポジションの人が一丸となってトライを目指す。その精神で県政でもさまざまな課題をクリアしたい」と述べた。
 政治を志したのは、4年ほど前に老老介護の現場で「公助」の必要性を強く感じたのがきっかけ。「次世代のリーダー」として、医療・福祉の充実や人口減少対策などに取り組むという。IR誘致など重要課題は中村県政の方針を継続する姿勢を示すが、石木ダム建設については、まず反対住民と話し合う場を設けたいとしている。
 千葉県出身で東京の食品コンサルティング会社社長、宮沢由彦氏(54)は石木ダム事業の見直しなどを掲げている。

◎参院選 与野党2人 立候補予定

 参院選は7月10日投票が有力視されている。長崎選挙区(改選数1)は、自民党現職の金子原二郎氏(77)=2期目=と立憲民主党県連副代表で新人の白川鮎美氏(41)が出馬を予定している。非改選を含む同選挙区2議席は自民が4連勝で独占中。立民は昨年の衆院選で一定機能した野党共闘を模索し、議席獲得を狙う。
 金子氏は衆院5期、知事3期など経験豊富で、昨年10月には農相として初入閣。実績は申し分ない。だが関係者は「これまでと状況が全然違う」と気をもむ。
 先の衆院選3、4区は自民現職が苦戦し、立民新人に比例復活を許した。要因の一つが高齢批判で金子氏もひとごとではない。40代女性との「分かりやすい対立構図」(自民県議)に金子氏も「簡単にはいかない」と周辺に話したという。
 参院選は全県区。衆院選の県内4選挙区の総得票数を見ると、野党(国民民主、立民)4候補の合計は、自民4候補を3千票余り上回った。自民県議団も危機感を募らせ、分裂していた県議会2会派が昨年末、約4年半ぶりに合流した。
 白川氏は2019年参院選に旧国民から初挑戦。約22万票を獲得し善戦した。敗戦の弁で「3年後にリベンジする」と早々に表明し準備を開始。20年に合流新党の立民に参加し、昨年8月に公認予定者となった。
 知名度アップに向け朝の街頭活動や地域回りを重ね「声をかけてもらえるようになった」と手応えも。衆院選では候補者に同行し離島にも足を運んだ。
 支援組織の準備も進む。昨年末、衆院選でも共闘した7団体(労働4団体と立民、国民、社民)が意見交換。白川氏を推す方向で調整している。一方、共産党県委員会は「基本的に野党共闘で候補者を一本化する考え」。独自擁立について明言していない。

◎南島原市長選 松本氏、3選を目指す

 現職の松本政博氏(73)が昨年12月上旬、3選を目指して出馬表明した。今のところ対抗馬の動きは見られない。
 松本氏は2006年の新市発足に伴う市議選で当選。市議3期目途中の14年7月、官製談合事件で当時の市長が逮捕され、辞職したことに伴う出直し市長選に出馬し、初当選した。
 2期目は口之津港ターミナルビルや新学校給食センターなど大型公共事業を手掛けたが、人口減少や地域経済の疲弊など課題が山積。選挙戦で「具体的な市の将来像を示してほしい」との声も多い。

 □市議選
 
 南島原市議会(定数19)は現在、県議へのくら替えと収賄事件による辞職(公判中)で欠員2となっている。任期満了に伴う今回の改選には、残る現職17人のうち、2人が高齢を理由に引退の意向を示しているほか、2人が態度を保留。新人は6人の名前が挙がっている。現職は平均年齢67.7歳で、50代以下は3人、女性議員も1人にとどまっており、世代交代が進むかにも注目したい。

◎松浦市長選 友田氏、無投票再選か

 2期目を目指す友田吉泰氏(57)が昨年9月に出馬を表明。現時点でほかに動きはなく、2期連続で無投票になる公算が大きい。
 友田氏は1期目、公約の「ともだビジョン」に掲げた「松浦魚市場再整備の推進」などを着実に進めてきた。水揚げ日本一を誇るアジを活用した「アジフライの聖地」の取り組みは市の知名度を“全国区”にした。今後は市総合計画に掲げる「学び育てるまち」など六つの将来像の実現、コロナ禍で停滞した地場経済の立て直し、住み続けたいと思えるまちづくりが課題となる。

 □市議選

 松浦市議会(定数17)は今回の改選から1減の16議席を争うことになる。任期中に2人が死去し欠員が生じ、残る現職15人のうち3人が引退や出馬を断念。今のところ、現職12人、元職1人、新人8人の計21人が立候補するとみられる。定数削減で当選ラインの上昇が見込まれる。地盤が重なる候補者も多く、地盤以外からどれだけ票を上積みできるかが鍵となる。

◎川棚町長選 現職4選前向きか

 3期目の現職、山口文夫氏(74)を含め、立候補の表明はない。前回2018年は直前まで無投票との観測が流れたが、対抗馬に町議が名乗り出て、急転直下で選挙戦に突入した経緯もあり、情勢は流動的だ。
 山口氏は取材に「(出馬は)全くの白紙」と態度を保留。3期目は、春に完成予定の新庁舎建設や、基幹農道整備、川棚港埋め立て地の企業用地化などハード面で実績を上げた。一方、大崎半島の観光施設のあり方検討や石木ダム建設事業など積み残した課題もあり、周辺は「4選に前向き」との見方が強い。

◎波佐見町長選 後継巡る動き焦点

 県内現職首長最多6期目の一瀬政太氏(78)は「そろそろ若い世代に」と引退に含みを持たせつつ、態度を保留している。
 2018年の前回も引退を検討したが、後継探しが難航し出馬。24年間の任期中、波佐見焼の知名度を押し上げた実績の一方、選挙戦では多選批判にさらされた。20年に町職員が逮捕される官製談合事件が再発し、責任論もくすぶる。
 町議を含め複数の人物が取り沙汰されるが、目立った動きはない。今後、後継を巡る現職の指名や周辺の候補者擁立の動きが焦点になりそうだ。


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