アラフィフ夫婦「年金は月27万円、老後資金は4200万円。夫は再雇用で働く必要はある?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、58歳、パートの女性。もうすぐ定年を迎える夫の退職金と合わせて、老後資金は4,200万円。年金収入は月27万円。現状で、夫が再雇用で働くべきか迷っているといいます。老後資金は足りるのでしょうか? また、年金生活に備えていまから見直しておくべきことは? FPの横山光昭氏がお答えします。


もうすぐ夫が定年となります。会社から紹介されたファイナンシャルプランナー(以下FP)に老後に向けての貯金や生命保険について話を聞いたりしているのですが、他のFPの方の見解も聞いて、しっかりと今後のことを考えたいと思っています。

退職金は約2,500万円、また現在の貯金は1,700万円ほどあります。夫は定年後、再雇用で働くかどうかを迷っているところ。私はパートをしています。

65歳からの年金は、夫が19万円ほど、私が8万円ほどと「ねんきん定期便」に書いてありますので、二人で月に27万円の年金収入が見込めています。

投資もしてみようかと考えていましたが、未だ始められていません。贅沢な暮らしは望んでいないので、積極的に増やすことを考えなくても良いのかなと思っています。また、生命保険は会社の団体保険に入っているのですが、それだと高齢時(70歳)に保障が途中で切れてしまうため、何か保険に入ったほうが良いのかなと迷っています。

このような状況ですが、どのように整えていくと、この先の老後をうまく暮らしていけるでしょうか。

【相談者プロフィール】

・相談者:58歳、女性、パート

・夫:59歳、会社員 ・子ども二人:独立済み

・手取り収入:総額:54万5,000円

相談者/月収6万6,000円

夫/月収47万9,000円、年間ボーナス約240万円

・貯蓄:貯金約1,700万円

・来年の定年時の退職金:約2,500万円(予定)

・毎月の支出の目安:37万5,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費(管理費のみ):3万6,000円

・食費:7万3,000円

・水道光熱費:2万4,000円

・通信費(スマホ2台、ネット回線):9,000円

・生命保険料:3万2,000円

・日用品代: 7,000円

・自動車関連費(ガソリン/維持費):8,000円

・医療費:1万円

・交通費:2,000円

・被服費:1万3,000円

・交際費:1万円

・娯楽費:5,000円

・小遣い:10万円(夫7万円、妻3万円)

・嗜好品(酒):8,000円

・その他(新聞・NHK・理美容など):3万8,000円

横山:老後生活に向けて、資産管理や家計について検討されたいということですね。将来を見据えていくことは大切ですから、今後に備えるためにできることも考えていきましょう。

老後資金は4200万円で足りる?

ご相談者の老後資金は、予定通りの退職金が入ると約4,200万円と見込めます。毎月黒字でやりくりできていますから、夫が60歳になることまでに、もう少し増やせるかもしれませんね。

もし、60歳以降、夫が働かず、年金も繰り上げ受給をせず、妻がパートを継続したとすると、夫が65歳になるまでに必要な資金はひと月30万9,000円(37万5,000円−妻パート代6万6000円)の5年分で、1,854万円が必要な計算になります。老後資金の半分弱がなくなる計算です。

年金生活に入り、今と同じ生活を続けたとすると、毎月の不足額はいくらになるでしょうか。生活費が37万5,000円、ご夫婦のひと月の年金受給額が27万円ですから、差額の10万5,000円を補填する暮らしになります。この金額を20年補填し続けると2,520万円、30年だと3,780万円が必要になります。

年金暮らしに備えて支出をコントロールすることが必要に

もちろん、年齢を経るごとに支出が減る可能性もありますが、物価が上がる可能性もありますし、生活費は必ずしも減ると見込むことはできません。また年齢差が1歳ありますから、そこで収入、支出の調整を図らなければならない時期も出てきますから、きっちり計算通りとはいかないでしょう。ですが、大雑把にこのように見積もると、ご主人が定年退職し、しかも今と同じ暮らし方を続けると、老後資金は足りないということがわかります。

ご主人には再雇用等で働くことを前向きに検討いただき、かつ、支出をコントロールし、生活費を年金受給額に近づけ、補填額を少なくすることが、老後資金を長持ちさせるために必要なこととなります。

お小遣いの額と用途を検討してみて

格安スマホを取り入れるなど、支出に気をつけている様子が伺えている反面、住宅ローンの負担がなくなっているのに月の生活費が37万円以上というのは、お金がかかりすぎている部分があるのではないかと思えます。

今は働いていらっしゃるので、小遣いを多めに取っていますが、定年したら金額を見直しても良いかもしれません。ただ、どのような支出を小遣いでまかなっているかにより、下げられるかどうかが変わってきますので、削減を考える前に小遣いの役割いを話し合っておきましょう。

水道光熱費や食費の見直しも年金生活への大事な準備

また、水道光熱費はお二人暮らしでは少し多めかと思います。使い方を見直されても良いでしょう。食費も同様です。年齢とともに、量より質を求めがちで、食費が減らないというご夫婦も多くいらっしゃいます。楽しみはもちろん残して良いのですが、どこか妥協できる部分を見つけ、削減していくと良いでしょう。また、管理が難しいということであれば、予算を組む期間を短くし、1週間程度でみていきましょう。買い物をしない「支出0円Day」を作ってみても良いと思います。

このように支出を削減し、コントロールしながら、年金生活に入る準備をしていくと良いでしょう。老後は切り詰めた暮らしだけよりも、楽しみにもお金を使いながら、締めるところは締めるというメリハリをつけられると、たくさんのお金をかけなくても豊かな暮らしをしていけるのではないかと思います。

インフレに負けないために、一部を投資に

ご相談者ご夫婦がお考えのように、お金を積極的に増やすような投資はしなくても良いと思います。ですが、今は超低金利ですし、インフレリスクを考えると、普通預金にお金を置いておくだけでは実質価値は目減りしていくでしょう。それを防ぐために、老後資金の一部を投資に移行していくことを検討されても良いと思います。目的が目減りを防ぐことですから、お金を積極的に増やすような投資ではなく、お二人で「つみたてNISA」のような税制優遇制度を利用して、少しずつつみたてて投資をしていく方法が適していると思います。ここはご意向もあるかと思いますので、十分にご検討ください。また、始めるにあたっては、投資の概要を教えられるFPなどの専門家に、家計のバランスも含めてアドバイスを受けるのも良いかと思います。

今後の保険の考え方

最後に生命保険ですが、住宅ローン完済、お子様の独立、現在の資産等から考慮すると、死亡保険は不要と考えてもいいと思います。検討すべきは、これからの「生きていく際の保障」として、「ガン・三代疾病」を保障する保険でしょう。終身医療保険(オールマイティなもので、入院したら、手術したら出るもの)はマストではないと思います。貯蓄や健康面の不安などと勘案した上で判断されるといいでしょう。

ご相談者ご夫婦のこれからの暮らし方を考えるヒントになったでしょうか。ぜひ、老後に向けて今からできることをご検討いただき、行動に移していただけたらと思います。

© 株式会社マネーフォワード