読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、53歳、専業主婦の女性。夫が他界し、遺族年金と定期保険の収入で暮らす相談者。地方の介護付き老人ホームに入居を希望していますが、いくらあれば可能なのでしょうか? FPの飯田道子氏がお答えします。
53歳、専業主婦です。夫は他界しており、遺族年金と定期保険で暮らしています。子ども2人は同居していますが、経済的には独立しています。
老後は、地方の介護付き老人ホームで暮らしたいと考えておりますが、入居できるでしょうか?
【相談者プロフィール】
・相談者:女性、53歳、専業主婦
・同居家族:
23歳大学院生(奨学金+授業料免除+給料13万)
21歳、会社員、月収15万円
・住居の形態:持ち家(戸建て・関東)
・毎月の世帯の手取り金額:26万5,000円(遺族年金11万5,000円+定期保険68歳まで15万円)+会社員子ども収入15万円。ただし母親の収入のみでの生活
・ボーナスの有無:なし
・毎月の世帯の支出の目安:15万円
【毎月の支出の内訳】
・住居費:0円
・食費:4万円
・水道光熱費:1万5,000円
・保険料:6万円
・通信費:1万円
・お小遣い:1万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:10万円
・現在の貯金総額(投資分は含まない):2,500万円 (うち1,000米ドル建介護保障型終身保険)
・現在の投資総額:0円
・現在の負債総額:0円
・公的年金:65歳から13万円
飯田:今回は、地方暮らしを希望している相談者様です。そのために、老後を過ごすためのベースとしての介護付き有料老人ホームへの入所を希望しているようです。入居資金を貯めたいとお考えの相談者様ですが、どのような点に注意していけば良いのでしょうか。
介護付き老人ホームの入居金は2000〜6000万円台まで様々
もしかしたら、すでに心に決めている場所、介護付き有料老人ホームがあるのかもしれませんが、ここでは情報がないため、一般論をもとに、話しを進めていきます。
介護付き有料老人ホームですので、恐らく終身介護付きの施設に入所を考えていらっしゃるのだと思います。介護付き有料老人ホームの入居金は、施設や付随するサービスによって、かなりの違いがあります。
たとえば同じ企業が運営を行っている介護付き有料老人ホームの場合、1人の入居金は、一番手頃な施設で2,172〜4,899万円。反対に、一番高額な施設では2,962〜6,417万円となっています。また、同施設での価格の違いは、施設内の立地や広さなどがあります。同じ施設なら、手頃な価格の部屋に入居したいと考えると思いますが、こればかりは空きがなければ入居することはできません。ある意味、タイミング次第となります。
毎月の生活費はいくらかかる?
毎月の生活費は、管理費と水道光熱費と食費です。そして介護が必要なときには、介護状態にあわせて、介護保険の自己負担金がかかる仕組みです。
上記で示した施設のうち、伊豆にある施設の場合の毎月の生活費は、約11万6,000円です。ただ、これは3食ともに施設内で食事をした場合であり、食費のみで6万円強かかる計算になります。室内にはキッチンがありますので、自炊を組み合わせれば、節約できるのがメリットと言えますね。
このように、施設によって、節約できる費用や節約できない費用(管理費等)があります。気になる施設があるなら、施設を見学し、体験入居をすることをお勧めします。そのうえで、自分が暮らしたい施設を選ぶといいでしょう。
家族が遊びに来やすい場所がお勧め
年齢を重ねると、新しい場所での生活に慣れるのにも時間がかかります。そのためにもお試し入居は有効です。
また、元気なうちは地方で新たな仲間と施設で暮らすのは楽しいかと思いますが、地方の場合、交通の便などが限られることもあり、出かけにくいことも考えられます。可能であればご家族が遊びに来やすい立地の施設を選ぶと良いでしょう。ちょっとしたタイミングでご家族が施設に寄ってくれれば、嬉しいのではありませんか? すでにご家族で話し合っていらっしゃるかもしれませんが、お子さんたちの意見も取り入れてみてください。
また、介護付き=ずっと入居できると考えがちなのですが、病気やケガの場合は介護ではなく入院が必要になるため、介護保険の対象から外れます。場合によっては、退居しなければならないこともあり得るのです。施設と病院がどのように連携しているのかを確認するのもお忘れなく。
現状では入居は可能だけれど、ギリギリかも?
現在の毎月の世帯の手取り金額は、遺族年金と定期保険の収入で26万5,000円、会社員のお子さんの収入15万円とあわせて41万5,000円で、母親である相談者様の収入のみで生活できているようですね。
ただ、支出のなかに貯蓄額が10万円とありますが、このうちのすべてが相談者様の貯蓄になるのでしょうか? また、収入と支出で誤差もあります。多少、不明瞭な部分がありますが、頂いたデータをそのまま受け取れば、毎月10万円が貯蓄できる計算になりますので、相談者様が年金を受け取れる65歳までの12年間で1,440万円貯めることができます。現在の貯金総額とあわせると、3,940万円が貯まる計算です。
貯蓄額から考えれば、有料老人ホームの入居一時金は支払えますし、65歳からは年金として13万円受給できるため、有料老人ホームの生活費を支払うことは可能と思われます。ただし、ギリギリな印象を受けますので、入居する施設次第という印象は否めません。
お金の準備をどのようにするのか考える
今は働いていらっしゃらないようですので、可能であれば、毎月少額でもよいので、パートタイムなどで働いて収入を増やすことを考えてはいかがでしょうか? もちろん、フルタイムで働くのも充分にアリですよ。
相談者様は53歳と、まだまだ働ける年齢です。現在の支出を拝見すると、お子さんのために頑張って来られた姿もうかがい知れます。なかなかできることではありません。素晴らしいです。大学院に通うお子さんも、もうすぐ社会人になります。その後は、自分のために時間やお金を使っても良いのではないでしょうか? ただ、くれぐれも無理をせず、身体に気を付けてくださいね。