我田引水

 「腹立たしい。こんなことが許されるのか。地方にとっては迷惑な話だ」。大変な立腹のご様子である。国会議員の「一票の格差」を巡って作業が進む衆院議員の「10増10減」案に猛然とかみついたのは自民党の二階俊博元幹事長▲「国会議員の定数が減れば、地域の課題が細かくくみ取れなくなる」。一見、ご説ごもっとも、地方に暮らす私たちには頼もしい言葉にも映る。減員対象の選挙区が県内にもある。だが、氏の論法は飛躍している▲一連の一票の格差訴訟で物差しとされる「1対2」の基準は〈誰かの1票に、他の誰かの2票分を超える重みを持たせてはならない〉という平等選挙の大原則が出発点だ。極めて明快である▲選挙の報道で私たちは当選者を「ふるさとの代表」と呼び、時に「地域の未来を託」してきた。反省が必要かもしれない。憲法43条によれば、衆参の国会議員は「全国民の代表」だ。もし、その地域に国会議員がいなければ地域の課題に目が届かない…と言うのなら、問題なのはそんな政治の方▲二階氏らが主張する「3増3減」まで議論が押し戻されても本県が減員対象になることは変わらない▲ただ、どっちみち“蚊帳の外”だから、氏に同調できない-のではない。あまりに露骨な「我田引水」の味方ができないだけなのだ。(智)

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