ローン返済にiDeCoに…娘の学費まで貯金が回らない会社経営夫婦。どこを見直せばいい?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、夫婦で会社を経営する37歳の女性。マイホームを購入してから、ローン返済やiDeCoの積み立てのために、娘の学費まで貯金が回らないといいます。どこから改善すればよいでしょうか? また老後の備えは十分でしょうか。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。


会社経営をする夫婦です。夫が代表取締役として事業の軸を取り、私が取締役兼経理としてサポートしています。従業員は私たちのほか2人だけの、小さな会社です。

3年前、事務所兼自宅として、マイホームを購入しました。頭金を多めに入れたので、貯金はかなり減ってしまいました。ですが住宅ローンの返済を始めても、家計を黒字でやりくりできたので、娘が小学校に上がるときに、老後に向けてiDeCoを始めました。節税にも良いと聞いたからです。そしてそれとは別に教育費を貯めていくつもりでした。ですが、いざやってみると、全然お金が貯まりません。

娘はまだ小学校低学年ですが、このままズルズルいくと、教育費が貯まっていない、iDeCoからは引き出せないということになり、娘に申し訳ないことになってしまうのではないかと不安です。

iDeCoを2人分して貯金もしたいとなると、しっかりそれに回すお金を作っていかなくてはならないと思うのですが、今の家計からどのようにして作っていくとよいでしょうか。

やりくりの甘いところ、他のご家庭に比べ支出が多すぎるところなど、なんでもよいのでご指摘いただき、改善のアドバイスをいただきたいです。

【相談者プロフィール】

・相談者:37歳、自社経理

・夫:40歳、会社代表 ・娘:8歳、小2

・手取り収入:月収総額57万1,000円

・月収:夫36万6,000円、相談者20万5,000円

・ボーナスなし

・貯金:約150万円

・毎月の支出の内訳:57 万円

【プロフィール】

・住居費(住宅ローン):15万6,000円

・食費(外食含む:8万4,000円

・水道光熱費:1万5,000円

・通信費(スマホ2台):6,000円

・生命保険料:4万6,000円

・日用品代:2万2,000円

・医療費:4,000円

・教育費:5万3,000円

・交通費(カーシェア代含):1万6,000円

・被服費:1万8,000円

・交際費:1万2,000円

・娯楽費:4,000円

・こづかい:6万円

・その他:3万4,000円

・iDeCo2人分:4万円

FP:老後資金はiDeCoで作り、教育費は貯金でと役割別に計画しているのに、上手く進んでいないのですね。収入は生活するのに不足はないほどあると思えますから、支出のコントロールに問題があるのかもしれません。支出を見直し、余剰金ができたらそれをどう分配していくかを検討したほうがいいでしょう。

生命保険料や日用品代は中身を精査してみよう

支出状況を見ると、会社が負担する部分の兼ね合いもあるのか、水道光熱費、通信費などは、よくやりくりされていると思います。ですが、生命保険料、日用品代などは必要以上に高額になっているようにも感じられます。一度中身を精査してみると良いでしょう。

特に生命保険は、必要な保障を見直したりしているでしょうか。過剰な保障を備えすぎると、保険料がどうしても高くなってしまいます。一度中立なファイナンシャルプランナー等のところで見直しをすると、保障内容もわかりやすくなるでしょうし、保険料も下げられるかもしれません。

日用品代は、かさんでしまう原因を探してみましょう。振り返ってみると、ついドラッグストアに立ち寄ってしまい、買い物してしまうとか、新商品、特売商品はつい買ってしまうなど、買い物の特徴がわかるかもしれません。そうすると、それを防止する策を検討していけます。

他、見直しにくい部分ですが、お子さんの塾や習い事が多すぎないか、洋服代をかけすぎていないかも、見直せる可能性があります。幅広く見直しをし、ご家族が大切にしている支出を尊重しながら不要な支出を下げられるよう、検討していきましょう。

「使う」「貯める」「増やす」の目的別の貯金を作ろう

マイホームの頭金を支払ったことで貯金額が少ないということでしたが、現状から言うと、意を決して取り組まないと、貯金が増えることはありません。

ご家庭で必要な貯金は、「使う」「貯める」「増やす」の3つの目的別に分けて考えましょう。特に現金のまま預貯金で持っておきたいのは、「使う」「貯める」の貯金です。

「使う」貯金には、は生活費の1.5か月分を確保します。生活費+α(0.5か月分)として、臨時支出があっても安定した家計を維持するようにします。「貯める」貯金は「生活防衛資金」。最低でも生活費6か月分以上、12か月ほどあってもよいでしょう。教育資金は、この「貯める」貯金に、生活防衛資金とは別に貯めていきます。

「使う」「貯める」お金ができていないのに「増やす」に回している

まずは、生活を守るためには最低7.5か月分の生活費を作ることが優先で、今後はさらに教育費も準備しなければいけないということになります。

支出を見直す前の相談者様の家計から算出すると、約428万円が最低限必要な貯金額となり、現状の貯金額150万円では不足していることが分かります。この状況ですでにiDeCoを始めているということは、「使う」「貯める」が十分ではないうちに「増やす」にお金を回してしまっていると言えます。

貯金をしながら投資にもお金を回すことも悪くはないのですが、現状ではそれができていません。支出を見直すとともに、貯金に回すお金と投資に回すお金のバランスも検討していく必要があるでしょう。

老後の備えはiDeCoだけでは不十分?

相談者様のご家庭は会社の経営をしているので、収入は定期的に入りますが、ボーナスの支給がなかったり、退職金の準備がなかったりと、会社員ならもらえる可能性の高いお金が、入ってきません。ですから、自営業の方と同じように、自分自身で備えていかなくてはなりません。

iDeCoの利用は、個人収入の節税になりますし、老後の備えには適しています。ですが、厚生年金加入者の掛け金上限は月に2万3,000円です。満額を20年間積み立てて3%で運用できたとしても、受け取れる金額は元金と運用益を含め、約755万円です。これだけでは、1人分の老後資金として、十分とはいえない人が多いでしょう。

退職金などが見込めない人は、自分で備えるしかありません。家計を見直し、余剰金を増やすことができれば、つみたてNISAに取り組む、小規模企業共済に加入するなど、取れる策は複数あります。

教育費の準備もありますが、それだけに気を取られ、自分たちの老後資金が不足しないよう、バランスを考えながら準備策を検討していただくと良いと思います。

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