年収500万の会社員が「100万円の副業」をしたら、実際の手取り金額はどのくらい増える?

従来、日本企業の多くが「副業」を禁止していましたが、働き方改革の一環として、2018年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」をまとめました。

そしてコロナ禍を経て、収入減少の不安・在宅勤務の浸透など、さまざまな要因が含まれますが、ひとつの結果として現在、副業を解禁する企業が増加しています。直近、2018年と2021年を比較した各種アンケート調査では、「副業を容認する日本企業」は 約50%から 約55%程度増加しているという結果もあるようです。

そこで今回は、年収500万円の会社員(給与所得者)が、副業で100万円の収入があった場合、税金の計算上どのような注意点があり、実際の手取り金額がいくらになるのか、ポイントを解説していきます。


副業収入の所得計算

まず、どのような雇用契約に基づいて副業収入が発生するかを確認しましょう。

緊急事態宣言化、巣ごもり期間に飛躍的にニーズを伸ばしたのが、「フードデリバリー」のサービスでした。街を走る配達員を目にする機会は、随分と増えた印象です。また、インターネットを利用した副業(プログラム、オークションなど転売収益、動画広告料)も、在宅勤務の空き時間を利用するには、効率的だと思います。

おそらく「雑所得」に含まれる収入形態が多いので、今回は雑所得をメインに解説を進めます。

忘れてはいけない、「年間20万円未満」の落とし穴

副業をして20万円以内に抑えたら申告をしなくてもよい、というのは「所得税」に限った特例措置です。

住んでいる市区町村に対して払う「住民税」には、このルールが適用されませんので、別途申告をしなければいけません。

年末調整や確定申告をすることで、その方の年間収入・所得の情報が各市区町村に送られて、住民税の計算が行われますが、20万円未満で確定申告が不要となると、市区町村にその情報がいかないことになってしまいます。

最近では窓口に行かなくても、郵送対応をしている市区町村も多いので、住んでいる市区町村ホームページで申告方法を確認してみてください。

「雑所得」の計算ポイント

雑収入を得るために、出費(経費)が発生した場合は、収入から差し引くことができます。例えば、フードデリバリーの配達のために自転車を購入した場合や、執筆を行うためのパソコンを購入した場合、または修理代や燃料費、電車移動費などが経費にあたります。

ここで注意が必要なのは、バイクやパソコンなどを購入した場合、その種類や金額に応じて、その年で全ての経費を計上できるわけではなく、法律で決められた「減価償却」という計算を取り入れなければならない部分です。

例えば、100万円の収入を得るために20万円のパソコンを購入して、その年の途中で修理代金として5万円が掛かったとすると、
収入 100万円 - 減価償却 5万円 - 修理代 5万円 = 雑所得 90万円 となります。

また、雇用契約がなく雑所得を得た場合には、社会保険料への影響はありませんが、パートやアルバイトなどの雇用契約があり、給与収入として報酬を得た場合、労働環境や条件によっては、本業の社会保険料に影響が出たり、副業先で社会保険加入の義務が発生するかもしれないので注意が必要です。

年収500万円の会社員の副業の手取り金額

では、具体的に税金の計算をしてみましょう。

所得税は下記のような流れで決定されます。

今回は 「独身者」 で、「社会保険料= 給与収入の 14.5% 」 という条件の元、試算をしています。
また、副業収入は上記の例を引用し、
収入100万円-減価償却(パソコン)5万円-修理代5万円=雑所得90万円 で計算をしました。

100万円の副業をした場合の税金の額

上記の計算に基づいて解説をすると、副業100万円の収入を得ることで、76万8,100円の手取り金額が増えることになりました。

税金の増額分を計算すると +18万1,900円。 必要経費が 5万円(パソコンの修理代)というシミュレーションをしました。※購入をした20万円のパソコンの資産価値など、細かな解釈は省略します。

これは100万円の収入に対して23.2% が税金+その他コストに占めた割合です。

つまり「副業で得た収入の全額を自由に使えるわけではない」のと同時に、手取り金額が上昇するということは、生活レベルの向上や将来設計のためにも、非常に意味のある「使えるお金」とも呼べるでしょう。


少子高齢化に伴い、増税が続く日本において、サラリーマンの平均年収が過去30年変わらないという数字も出ています。

資産形成をする上で、生活コストの削減や投資・運用という手法も当然重要ではありますが、そもそも「収入を上げる」手段として、「副業」という選択肢が身近になる中、今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

※参考:厚生労働省 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」

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