長崎県知事選 県農政連と金子農相 対応割れる 農業や参院選への影響懸念

 来月3日に告示される長崎県知事選を巡り、県内農業団体と国の農政トップの対応が割れている。県内JAグループの政治団体「県農政連盟」は現職の中村法道氏(71)を推薦し、辻田勇次委員長が選対本部長に就任。一方、金子原二郎農相(77)=参院長崎選挙区=は、自民党県連が推薦する医師で新人の大石賢吾氏(39)の支援を明言。県内農業や、今夏に金子氏が改選期を迎える参院選への影響を懸念する声も上がっている。
 22日、長崎市であった中村氏の事務所開き。あいさつに立った辻田氏は「農政連は今までにないような運動に取り組んでいる」と力を込めた。同じころ、佐世保市であった大石氏の事務所開きには金子氏が出席。「厳しい(選挙戦になる)かもしれないが、一緒になって戦うことを改めて誓う」とあいさつした。
 県農政連は、自民の有力支持団体で盟友(組合員、JA職員)は約10万2千人。昨秋の衆院選も自民候補を支えた。2010年の知事選は、国政で下野していた自民とともに中村法道知事の誕生に尽力。前々回、前回も歩調を合わせ中村氏を推薦した。
 今回も現職を推す理由は県内農業の成長にあるという。中村氏は3期12年で農地の集積や基盤整備などに取り組み、大規模化や機械化を推進。就任10年で県内の農業産出額は約1割増え1500億円を突破した。辻田氏は「農業者から『現職を』との声が多い。自民とは常に一体だが、農政連は農業者の思いを実現する責任がある」と話す。
 中村氏の周辺からは「金子氏は農政連にメンツをつぶされたのでは」との声も漏れる。県農政連のある幹部は「金子氏が推す人と、違う人を支援していいのかと心配する組合員もいる。長崎県は財政基盤が弱く、国の補助金が頼り。国の後押しが弱まらなければいいが」と懸念する。
 これに対し金子氏は「農政連の現職推薦はやむを得ない」と淡々と話す。自身の参院選への影響についても「支持者から心配されるが、これまでも自分の事より県政を第一に考えてきた」と意に介さない。
 県農政連の複数の幹部は「知事選とは関係なく、参院選は金子氏を応援する」と口をそろえる。ただ、ある幹部は「参院選を考えれば金子氏には動いてほしくなかった」と残念そうに話した。


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